娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

慶応2014民法

第1.(1)について

1.AのCに対する所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権は認められるか。請求原因は、①A所有、②C占有である。本件クレーンはAが所有している(①)。また、現在Cは本件クレーンの引渡しを受けて占有している(②)。よって、請求は認められるとも思える。

2.もっとも、Cは本件クレーンの売買契約という「動産」の「取引行為」に基づいてその引き渡しを受けている。また、本件ではBはCに本件クレーンは購入したものである旨説明しており、「善意」・無「過失」の推定(民法186条1項、188条)が覆されることはない。また、強暴、隠避に関する事情もなく、186条1項によって「平穏」「公然」といえる。よって、192条の要件を満たし、Cには本件クレーンの即時取得が認められるため、①といえず、Aの請求は認められないとも思える。もっとも、本件ではBC間で本件クレーンの所有権をBに留保する特約が結ばれており、即時取得は認められないのではないか。

(1)即時取得の趣旨は、動産の占有に公信力を与え、動産取引の安全を図る点にある。そうすると、所有権留保特約が締結された場合でも、即時取得者は、真の所有者に対して即時取得による所有権喪失の抗弁を主張できると考える。

(2)本件では、上記のようにCに即時取得が成立しているため、BC間で所有権留保特約が締結されていたとしても、Aは本件クレーンの所有権を喪失する。よって、Aの上記請求は認められない。

3.そうすると、AはCに対して債権者代位権(423条1項本文)によって、本件クレーンの売買代金を請求することが考えられる。

(1)責任財産保全の趣旨から、「保全するため」とは、被保全債権と債務者の無資力をいう。

 本件では、AはBに対して本件クレーンの賃料債権を有し、被保全債権がある。また、Bは倒産しており、無資力である。よって、「保全するため」といえる。

(2)また、本件クレーンの売買代金は支払われておらず、「被代位権利」もある。

(3)よって、賃料債権の範囲で(423条の2)、上記代金を直接請求することができる(423条の3)。

第2.設問2

1.DのBに対する所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権は認められるか。①D所有、②B占有が要件となる。本件では、Dは本件工事現場を所有している(①)。もっとも、本件クレーンを放置させたのはCであり、Cが本件工事現場を占有しているため、Bに対する請求は認められないとも思える。

2.もっとも、本件では所有権がBに留保されており、Cが代金を支払っていない以上Bが本件クレーンを所有しているはずであり、Bが本件クレーンで本件工事現場を占有しているとも思える。ここで、留保所有権者の占有が認められるといえるかが問題となる。

(1)弁済期到来前は、留保所有権者は目的物の交換価値を支配するにとどまるため、「自己のためにする意思」(180条)がなく、占有が認められない。もっとも、債務が弁済されずに弁済期が経過した後は、留保所有権者に目的物を使用・収益・処分する権利があるため、「自己のためにする意思」があり、占有が認められる。

(2)本件では、本件クレーンの代金は1週間後以内であるとされており、Cは代金を支払わないまま弁済期を経過している。そうすると、債務が弁刺されずに弁済期が経過したといえる。よって、留保所有権者Bの占有(②)があるといえる。したがって、上記DのBに対する請求が認められる。

以上