娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

中大2018民法

第1.説問1

1.まず、本件ではA会社とD市との間では売掛債権を譲渡・担保設定等ができない旨合意されており、D市はC会社からの請求に対して譲渡禁止特約(民法466条2項)の抗弁を主張することが考えられる。もっとも、譲渡禁止特約は債権譲渡自由の原則(同1項)に対する例外であるから、債務者の側で譲受人が悪意であることを主張しなければならない(同2項但書)。

 本件では、上記合意内容は基本契約書に記載されており、そのコピーをC会社は債権譲渡時に受け取っていることから、C会社は譲渡禁止特約を知っていたといえるから、悪意だったといえる。よって、上記抗弁を提出してDは支払いを拒むことができる。

2.次に、C会社はA社の取引先に対して有する現在および5年後までの将来債権を譲受しているため、将来債権譲渡の有効性が問題となる。

(1)将来債権を譲渡することで融資を受けられる者もいることから、社会的に将来債権譲渡の必要性はある。また、効力が発生しないリスクは譲渡人に対する損害賠償請求(415条)で解決できるため、弊害もない。そこで、発生原因・額・始期・終期等で特定性のある将来債権譲渡は有効である。もっとも、譲渡人や債権者を著しく害する特段の事情によって公序良俗違反(90条)により無効となりうる。

(2)本件では、確かに譲渡された債権はA会社の取引先に対する債権であるため発生原因が広域である。しかし、現在・5年後までと始期・終期も定まっており、特定性があるといえる。また、契約内容にも特段の不利益を生じさせるものはなく、上記特段の事情もない。よって、このことから債権譲渡は無効とならないため、請求を拒む理由とならない。

3.最後に、C会社がA会社の代理人(99条1項)として債権譲渡の通知をしても、C会社はD社に対して債権譲渡を対抗できないのではないか(467条1項)。

(1)同項が譲渡人を通知の主体としている趣旨は、実際に債権譲渡が行われていなくても債務者が譲受人に債務を弁済してしまう弊害を防止する点にある。そうすると、譲渡人の代理人として譲受人が通知をしても、その通知は無効であると考える。

(2)本件では、C会社という譲受人が通知をしており、これは無効であるから、債権譲渡が仮に有効であったとしてもD市はCからの請求を拒める。

第2.説問2

1.本件ではTはP会社のQ会社に対する1000万円の債務を支払うことを許諾している。P会社は賠償資力がないことから、本件債務引受けはTが単独で債務を引き受けることにしたと考えられる。よって、本件債務引き受けは免責的債務引き受けであると考えられる。

2.免責的債務引受けは債務者の変更が生じるため、引受人の同意を要する。また、債務者の変更が生じる点以外は第三者弁済(474条1項)に類似するため、旧債務者の意思に反しない必要がある(同2項参照)。そこで、①旧債務者・債権者の契約と、②引受人の同意があれば免責的債務引受けの要件は満たされる。

 本件ではP会社・Q会社で契約があり(①)、Tは同意している(②)ため、免責的債務引き受けの要件は満たされる。

3.もっとも、Tは4000万円の債務額を最大1000万円と勘違いしており、錯誤無効(95条本文)を主張できる。よって、支払義務をこのように争える。

以上。