娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H28民法

1.DのBに対する40万円の請求

DのBに対する他人物売買(民法(以下略)560条)の担保責任(561条但書)に基づく損害賠償請求権は認められるか。本件では、遺贈(964条本文)によってCは子機械の所有権を取得している。本件売買契約ではCではないDが売主となっており、「他他人の権利を売買の目的としたとき」(560条)といえる。よって、本件売買契約は「前項の場合」(561条本文)といえる。そして、CはDに対し甲機械を直ちに返還するように求めており、BはDに甲機械の所有権を「移転することができない」といえる。もっとも、BはDに対して本件売買契約の際甲機械の所有権はCであることを説明しており、Dは甲機械の所有権が「売主に属しないことを知っていた」(同但書)といえ、同条による請求は認められない。もっとも、同条は有償契約による対価的均衡を維持し買主の信頼を保護するために設けられた415条後段の特則にすぎず、本件でも同後段による請求は妨げられない。要件は、①履行不能、②債務者の帰責性、③損害、④②③の因果関係である。

(1)本件では上記のようなBの履行不能がある(①)。

(2)帰責性とは、故意・過失又は信義則上これと同視すべき事由をいう。

本件ではBとCは母子という親族関係にある(725条1号)ため、BはCの物を処分する際にはCに処分する旨を確認する義務があった。それにもかかわらずCが甲機械を使用することはないだろうと決めつけ、海外にいるCに電話で聞く等の確認を怠っている。よって、過失があり債務者の帰責性があるといえる。

(3)Bは甲機械を、印刷業を営むDに対して売っている。印刷業を営む者が甲機械を手に入れられなければ通常、新たな機会を購入しなければならない。よって、乙機械を購入するために要した追加分40万円は「通常生ずべき」(416条1項)といえる。よって、40万円は損害といえる。

(4)②③には社会通念上の因果関係がある(④)。

(5)以上から、40万円について履行不能に基づく損害賠償請求権は認められる。

2.DのB・Cに対する請求

 DのB・Cに対する50万円の請求

 Dは平成27年5月22日、甲機械の引渡しを受けており、同年9月22日にBから返還請求を受けるまで甲機械を占有しているため、「占有者」(196条本文)といえる。また、甲機械には数か所の故障があったのであり、Dは30万円かけてこれを修理している。これは占有物を現状で維持する支出であるから、「必要費」といえる。また、Dは「果実」(同但書)を取得していない。よって、甲機械の「回復者」(同本文)であるCに対するDの同条に基づく30万円の必要費返還請求権が認められる。

3.B・CのDに対する主張について

(1)BのDに対する解除(540条1項)に基づく原状回復請求権(545条1項本文)としての使用利益25万円の返還請求権は認められるか。本件売買契約は解除されており、「解除権を行使したとき」といえる。もっとも、Bは他人物売主であり「相手方」といえるか。

ア、同本文の趣旨は、原状回復によって当事者間の公平を図る点にある。そうすると、「当事者」には実際に他人物を売った他人物売主が含まれる。

イ、本件では、他人物売主はCではなくBである。よって、Bが「相手方」に含まれる。(2)そして、同2項も上記趣旨であるから、使用利益についても同2項が準用されると考える。

(3)よって、BのDに対する使用利益25万円の返還請求権は認められる。

4.結論

 1から、DのBに対する40万円の損害賠償請求権(①)は認められる。2から、DのCに対する30万円の必要費償還請求権(②)が認められる。3から、BのDに対する25万円の使用利益返還請求権(③)が認められる。よって。Bは③を自働債権として、①と対等額で相殺する(505条1項)、旨の意思表示(506条1項)をすればBの控除に関する請求は認められる。

以上。