twitter社に対する、なりすまし加害者の携帯番号の開示請求が認められた。
インターネットで2ちゃんねるが普及したころ、管理人であるひろゆき氏に対する民事訴訟が提起されたことがあった。あるサイトにおいて誹謗中傷等の権利侵害が発生した場合、そのサイトの管理人に責任を押し付けるのは不当である。このような見地から平成13年に公布、翌年に施行されたのがプロバイダ責任制限法である。その法律について昨日、東京地裁が興味深い判決を下した。僕はこれを機に、プロバイダ責任制限法についてちょっと詳しくなろうと思ったので、この記事を書くに至った。
1.プロバイダ責任制限法について
2.本件なりすまし事案についての地裁判決
3.感想
1.プロバイダ責任制限法について
(1)同法の趣旨・構造
第一条 この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。
→①損害賠償責任の制限、②発信者情報の開示を同法の枠組みとしている。また、驚くべことに、同法の条文はたったの4条である。同法が定める事項はとても少ないのである。
(2)本件事案との関係で問題となる条文
3(略)
4(略)
これこそが、被害者がプロバイダに対して発信者情報の開示を請求するための条文である。また、「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるもの」の中には、電話番号は含まれていない(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=414M60000008057&openerCode=1参照)。そうすると、総務省令を合わせて考えても、条文上被害者は発信者の電話番号の開示を請求することはできない。
2.本件なりすまし事案についての地裁判決
(1)本件事案の概要
神奈川県の男性(19)が、18才の高校時代にtwitter上でなりすまし被害を受けていた。なりすましのアカウントには、卑猥な書き込みなどがされていた。男性はこれを肖像権の侵害であるとして、同法4条1項に基づいて携帯番号の開示をtwitter社に求めた。
(2)争点
原告の上記請求に対しtwitter社は、携帯番号は同法および総務省令上開示対象外であると反論したため、この点が争点となった。
(3)判決
東京地裁は肖像権の侵害を認定した上で、携帯番号は被害者回復の手がかりとなることを理由として、開示対象から除外する理由はないとした。
これで、条文上は根拠のない携帯番号の開示請求が、地裁レベルではあるが、判例上認められたことになる。
3.感想
従来は、被害者が発信者の氏名・住所を知ろうと思った場合、被害者はIPアドレス(これは総務省令で開示が認められている)の開示を請求した上で、更に氏名・住所の開示を裁判所に対して請求しなければならなかった。もっとも、本判決に従えば、被害者は携帯番号を開示請求できる。携帯番号があれば、被害者は携帯会社に対する弁護士会の照会によって直接、氏名・住所を開示請求することができるようになる。そうすると、本判決は、被害者の権利救済に資する判決であるといえるだろう。