娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問30

1.本件同項では、Kは嫌がるXを無理やりパトカーの後部座席に押し込み、警察署に同行しており、Xを実質的には令状(刑事訴訟法(以下略)199条1項本文)なしで逮捕していることになる。よって、本件同行は令状主義に反し違法である。

2.一方で、Xは尿を任意提出してKがこれを領置(221条)しており、尿の取得は違法ではなく、尿の鑑定書は違法収集証拠排除法則によって尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとも思える。もっとも、本件同行と尿の取得はXの起訴という同一目的に向けられたものであり、量の取得は本件同行を直接利用したものであるから、両者には密接な関連性があり、本件同行の違法性が尿の取得に承継されるため、本件では上記法則を適用しうる。ここで、上記法則の要件が問題となる。

(1)上記法則の根拠は、司法の無瑕性、将来の違法捜査の抑止である。そうすると、①令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、又は②将来の違法捜査抑制の見地から証拠排除が相当である場合に上記法則は適用される。

(2)本件では、XはKによって無理やりパトカーの中に押し込まれており、身体活動の自由に対する制約は著しかったといえる。また、令状が発付されていたが呈示はされなかったというわけではなく、そもそも令状発付がされていないのだから、199条1項という法規からの逸脱の度合いは大きい。そして、嫌がるXを見たKには法潜脱の意図もあったと考えられる。よって、令状主義を没却するような重大な違法があったといえる(①)。よって、本件で問題となるのが覚せい剤事犯という重大な事件であり、証拠が尿という重要なものだったため証拠排除が相当とは言えないとしても、上記法則が適用される。

3.以上から、本件では尿の鑑定書の証拠能力が否定されるため、裁判所はXの公判でそれを証拠として用いることはできない。

以上