娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

中大2017憲法

1.風営法3条は、風俗営業者の営業の自由(憲法(以下略)22条1項)を侵害し、違憲とならないか。

(1)同項は「職業選択の自由」を保障しているが、それを選択した後の営業についても保障しなければ選択について保障した意味がないため、営業の自由は同項により保障される。よって、Xのような風俗営業者にはディスコ形態で店を経営する自由が保障される。もっとも、風営法2条でディスコ形態の営業が該当する「風俗営業」を定義した上で、同3条でその営業のためには許可が必要とされており、同自由に対する制約がある。

(2)職業の自由についての規制は様々であるため、規制の合憲性については、規制の目的・必要性・内容、職業の自由の内容・性質、制限の程度等を比較衡量して判断する。

 ディスコ形態で店を経営すれば、ディスコが好きな客が店に来て営業者は自己の生計を維持できるのみならず、ストレス発散の場が提供されるためや社会的意義もある。また、ディスコ形態で店を営業するのが大好きな者もいることから、人格的価値とも不可分の関連を有する。

 確かに許可を受ければ営業自体はできるため制約は弱いと思える。しかし、許可は出されるかわからないものであり、許可がなければ起訴され、刑罰という重大な不利益を被ることもあるから、制約は重大でといえる。

 また、風営法1条の目的には「風俗営業の健全化」があり、これは秩序維持のための消極目的である。この目的を受けて同2条、3条が定められているのだから、同条の合憲性審査には裁判所の判断がなじむ。

(3)以上から、目的が重要で、手段に実質的関連性がなければ違憲となる。

(4)風営法3条の目的は、「風俗営業の健全化」(同1条)である。確かに風俗営業の健全化についての立法事実はないとも思える。しかし、現在日本では地域によっては風俗営業を水面下で行い、善良な風俗が害されている地域も存在すると考えられる。そうすると、風営法3条の立法は必要度が高く、目的は重要といえる。

 また、同3条のような許可制を定めれば「風俗営業」の営業者数は減るため、「風俗営業の健全化」という目的は達成され、目的が手段を促進する。確かに同3条の許可がなければ刑罰を科すというのは過剰であるとも思える。しかし、刑罰を科さなければ水面下で同様の営業を続けることも可能であるため、過剰とは言えず、手段に必要性がある。よって、目的・手段に実質的関連性がある。

2.以上から、風営法3条は22条1項に反しないため、合憲である。

以上。