娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問28

1.本件書類は違法収集証拠排除法則によって排除されないか。

2.まず、確かに本件では捜索差押許可状(刑事訴訟法(以下略)218条1項本文)は発付されているため、令状発付なしでの捜索差押えという令状主義違反はない。しかし、Kは令状の提示をしておらず、222条1項本文、110条違反がある。よって、本件捜索差押は違法である。

3.ここで、上記法則の要件が問題となる。

(1)上記法則の根拠は、司法の無瑕性、将来の違法捜査の抑止である。そうすると、①令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、又は②将来の違法捜査抑制の見地から、証拠を排除することが相当である場合には、その証拠は排除される。

(2)本件では、確かにKがした捜索差押えは発付されていた令状記載の範囲を超えるものではなかったため、Zの被侵害法益は最小限にとどまっていたといえる。しかし、逸脱された法規は110条である。110条の趣旨は、捜索差押対象者に受忍限度を明らかにして不当な人権侵害を防止する点にある。よって、本件では重要な法規が逸脱されたといえる。また、Zは捜査報告書の作成にあたって、捜索差押許可状を提示した旨虚偽の事実を記載しており、この糊塗からXの法潜脱の意図が推認される。よって、令状主義の精神を没却するような重大な違法がある(①)。

 そうすると、本件が詐欺事件という懲役刑にもなりうる事件である(246条参照)ため重大な事案であり、本件書類が土地の売買契約書という不動産詐欺の収容な証拠になるものであったため、将来の違法捜査抑制の見地から排除が相当であるといえないとしても、同法則の適用はある。

4.なお、上記違法はZに対するものであるため、別人であるXが本件書類の排除を主張できるかが問題となる。

(1)上記法則の上記趣旨から、申立適格は制限されないと考える。

(2)本件でも、Xは上記法則の適用を主張できる。

5.以上から、裁判所は本件書類を証拠として用いることはできない。

以上