娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問9

1.本件では、捜索差押許可状(刑事訴訟法(以下略)218条1項本文)に基づかないで天秤、注射器、ビニール袋(以下、本件対象物)を差し押さえているため、同本文のみによれば違法である。

2.もっとも、KはXを覚せい剤所持の現行犯人(212条1項、2項)として逮捕しており、令状によらない捜索差押え(220条1項2号、3項)は許されないか。

(1)本件では、「現行犯人を逮捕する場合」(同1項柱書前段)といえる。

(2)もっとも、Xが逮捕されたのは応接間であり、本件対象物は寝室にあったものである。ここで、「逮捕の現場」(同項2号)といえるかが問題となる。

 ア、同号、同条3項の趣旨は、「逮捕の現場」には類型的に証拠存在の蓋然性が高いため、事前審査を必要としない点にある。そうすると、実際に令状発付があったときと同様に考えるべきであり、「逮捕の現場」とは、逮捕された場所と同一の管理権が及ぶ場所を指す。

 イ、本件では、XはX方の応接間で逮捕されている。同応接間はX方の管理権に属する。そうすると、「逮捕の現場」の範囲はX方全体に及ぶから、寝室も「逮捕の現場」に含まれる。

(3)ここで、本件対象物は「差押」(同1項2号)対象物に含まれるか。

 ア、同号、同3項の趣旨は上記のものである。そうすると、「差押」対象物は被疑事実と関連性を有する物に限られる。

 イ、天秤は覚せい剤の量を計測するために必要であるため、覚せい剤所持と関連性を有する。また、注射器は覚せい剤を体内に取り込むため位使われるため、覚せい剤所持と関連性を有する。そして、ビニールは覚せい剤の保管に用いられるため、覚せい剤所持と関連性を有する。

(4)以上から、本件捜索差押は適法である。

以上