娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問2

1.本件では、XとYは警察官を見て急にもと来た道を急ぎ足で戻るという不審な行動をしているため、「何らかの犯罪を犯し」た「と疑うに足りる相当な理由」(警察官職務執行法(以下、警職)2条1項)があり、KとLの本件職務質問は適法である。

2.KがXの右手首を右手でつかんだ行為は、「停止」(同項)に含まれるか。有形力を用いており、問題となる。

(1)職務質問は任意手段であり(同条3項)、「必要な最小の限度」(同法1条2項)で許される。よって、①強制にわたらない限り、②停止措置の必要性、被侵害利益を考慮した上、具体的状況のもと相当であれば「停止」といえる。

(2)本件では、KはXの右手首を右手でつかんでいるが、一時的なものであり、強制にわたるとはいえない(①)。また、KはXのいきなり走り出すという怪しい行動の理由を聞くべきだったから、右手をつかむ必要性は高かった。一方で、Xは一瞬移動が制限されたにすぎず、利益侵害の程度は弱いよって、具体的状況のもと相当である(②)。よって、「停止」といえ、上記行為は適法である。

3.KがXに手錠をかけた行為は、「身柄…拘束」(同法2条3項)といえないか。

 確かに本件では、手錠は直ちに外されているため、強制にわたっておらず「身柄…拘束」といえないとも思える。しかし、手錠をかけられたものは自由な身動きが一切できなくなるため、手錠を一瞬でもかければ逮捕(刑事訴訟法(以下略)199条1項)が行われたというべきである。よって、本件では強制にわたっており、「身柄…拘束」といえるため、上記行為は違法である。

4.LがYのポーチに手を入れた所持品検査は適法か。

(1)確かに所持品検査の明文上の根拠はない。しかし、所持品検査は口頭による質問と密接に関連し、職務質問の効果を上げる上で必要性・有効性が認められる行為である。よって、職務質問に付随する行為として、警職2条1項を根拠に許される。そして、そのような付随処分である以上、原則として相手方の同意が必要である。もっとも、同条3項、同法1条2項から、①捜索に至らない程度の行為は、強制に渡らない限り、②所持品検査の必要性、被侵害利益を考慮した上、具体的状況のもと相当と認められる限度で例外的に許される。

(2)本件では、Lはポーチの提示を求めているのにKは拒否しており、所持品検査の同意はないため、原則違法である。そして、本件ではLはYが持ったままのポーチのチャックの中に手を入れて一般的探索をしているため、捜索に至る行為をしている。よって、①といえず、原則通り違法である。

以上