娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H25民事実務基礎科目

第1.設問1

1.(1)について

 本件占有権限の抗弁は、AB間の転貸借契約に基づくものである。転貸借契約は適法な賃貸借契約を前提とするものであり、賃借人(転貸人)の占有権限も抗弁事実に含まれる。また、賃貸借契約が諾成契約であることから、賃貸人・賃借人間の賃貸借契約の締結(民法601条1項)の主張だけだと占有が適法であることを示せない。そうすると、賃貸借契約と占有の関連性を示すために、基づく引渡しの事実も必要となる。

2.(2)について

(1)足りないと考える。

(2)仮に③④⑤⑥で足りるとすると、「承諾」(612条1項)がなかったことを賃貸人側で主張しなければ、同2項の解除権が発生しないことになってしまう。そもそも転貸借では目的物を使用・収益する者が変更されるため、一般的に賃貸人にとって不利、賃借人・転借人にとって有利となる。よって、転貸借を許す「承諾」は抗弁段階で被告である転借人が主張すべきといえるから、Yは③④⑤⑥に加えてAの「承諾」があったことまで主張する必要がある。

第2.設問2

1.本件ではAは「本件特約は、私が記載したものではありません。」と述べているから、同内容の証言を裁判所で発言することは有益である。よって、Aの証人尋問(民事訴訟法(以下、民訴)190条参照)を請求することが考えられる。

2.また、本件特約が一行だけ手書きであることが不自然である。これを書き加えたと考えられるYの筆跡の対象(民訴229条1項)の請求をするべきである。

第3.設問3

1.(1)について

本件では、Bが死亡して、相続が開始し、(民法882条)息子であるYは唯一の相続人となる(同887条1項)。そうすると、YはBの権利を承継する(同896条本文)結果、BY間の転貸借契約は混同(同520条本文)によって消滅する。よって、AB間の賃貸借契約に基づく占有権限の抗弁を主張することになる。

2.(2)について

 本件では、AB間の賃貸借契約は612条1項によって解除(同540条1項)されたという再抗弁を主張する。賃貸借契約の解除は、その時点から賃貸借契約は効力を失い(同620条本文)、Yの占有権限の前提であるBの占有権限を消滅させる抗弁と両立する事実の主張である。

第4.設問4

1.本件では、裁判所はAの賃貸借契約の解除(同612条2項、540条1項)は有効か。

(1)612条の趣旨は、賃貸借契約が信頼関係を基礎とする継続的法律関係であることに照らして、それを破壊する行為を無断借地権譲渡・転貸ととらえる点にある。そうすると、賃借人の側で背信行為と認めるに足りない特段の事情を主張立証すれば、例外的に解除権は制限される。

(2)本件では、確かにAB間の賃料は5万円、BY間の賃料も5万円であるから、Bが利益を得ようとしているとは考えられない。また、賃料自体はAがきちんと払っているため、Aは不利益を被ることはないとも思える。しかし、そもそも本件建物の適正賃料は月8万円であり、Bが5万円で借りられているのも長年の友人という関係あってのことである。そして、Bは遊んで暮らすような素行の悪さの持ち主であり、オーナーであるAとしてはBを住まわせたくないと考える。そして、Bは適法転貸を作出すべく本件特約の書き加えを行っているのであり、Bに対するAの信頼は失墜したといえる。以上を総合すれば、信頼関係は破壊されており、Bの行為はむしろ背信性を有する。よって、原則通り解除権は発生している。

2.以上から、裁判所はAの解除は有効との判断を下すべきである。

第5.設問5

1.まず、弁護士職務基本規定(以下、規定)29条1項に基づき、PはXのYに対する建物明渡の可否についての「見通し」をXに伝えるべきである。

2.また、XのYに対する本件建物明渡請求が認められれば、YはAに対して他人物賃貸借に基づく瑕疵担保責任民法559条、561条、560条)を追及することが考えられる。このようにYを介して「利害の対立」(規定32条)が生じるおそれがある。よって、PはXに対して同条に基づいて不利益事項を開示すべきである。

以上。