中大2019刑訴
第1.(1)について
1.本件で覚せい剤を差し押さえることは、令状主義(刑事訴訟法(以下略)218条、憲法35条1項)に反し、違法とならないか。
(1)令状主義の趣旨は、捜査機関から独立した司法機関による事前の司法審査によって不当な人権侵害を防止する点にある。そのような審査は被疑事実と関連性のある物の範囲で行われるため、差し押さえることができる物は被疑事実と関連性のある物に限られる。
(2)本件被疑事実は、甲がVの胸を突いてVを転倒させ、Vを死亡させた事実である。一方で、本件覚せい剤は甲の暴行やVの死亡と一切関係がない。よって、本件被疑事実と関連性があるとは言えず、Kは本件覚せい剤を差し押さえることができない。
2.このような理由でKは差し押さえることはできないと判断した。
3.本件覚せい剤を直ちに押収するためには、「所有者」Aからの「任意…提出」を受けて、本件覚せい剤を「領置」することが考えられる(221条)。
また、覚せい剤所持の事実でAを現行犯逮捕(213条、212条1項)したうえで、本件覚せい剤を差し押さえる(220条1項2号)ことも考えられる。
第2.(2)について
1.【写真】(以下、本件写真)は「公判期日における供述に代」わる「書面」(320条1項、以下、伝聞証拠)といえ、伝聞法則が適用されないか。
(1)同項の趣旨は、知覚・記憶・表現・叙述の各課程を経る供述証拠ではその間に誤りが混入しやすいのに、伝聞証拠では反対尋問(憲法37条2項前段)等による真実性の吟味をしえず誤判が生じてしまうため、それを防止する点にある。そうすると、上記各課程を経ても誤りが混入しない場合はその証拠は非伝聞証拠である。
(2)本件写真は、携帯電話により撮影されている。携帯電話の伝聞課程は機械的で誤りが混入する恐れはなく、非伝聞証拠である。
2.以上から、本件写真について伝聞法則は適用されない。
以上。