娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H26民事訴訟法

第1.設問1

1.本件では、XはYに対する所有権に基づく返還請求権としての建物収去土地明渡請求権とZに対する所有権に基づく返還請求権としての建物退去土地明渡請求権を提起する。同請求はYが乙建物を所有し、甲土地を占有しているという「同一の事実上及び法律上の原因に基づく」(民事訴訟法(以下略)38条前段)といえるため、訴え提起時に併合審理してもらうことができた。しかし、本件ではYに対する訴訟提起後にWが乙建物を占有していることにXが気付いており、Yに対する請求にZを被告として追加することができるかが問題となる。

(1)訴えの客観的追加的併合(143条1項)とは異なり、主観的追加的併合は認める名分がない。それのみならず、新訴につき旧訴の訴訟状態を必ずしも利用できるか不明で必ずしも訴訟経済に適うものではなく、訴訟をかえって複雑化させる等の弊害も予想される。また、原告が被告を慎重に選ばなくなり、濫訴が頻発し、訴訟が遅延することも考えられる。よって、主観的追加的併合は認められない。

(2)本件でも、Yに対する請求にZを追加することはできない。

2.よって、XはZに対して上記請求についての訴訟を提起した後、裁判所にXY、XZの両訴訟を併合(152条)するよう促すべきである。

第2.設問2

1.前提

まず、YはAX間で売買契約が締結された事実を認める陳述をしている。これが裁判上の自白(179条)にあたらないか。

(1)裁判上の自白とは、①口頭弁論又は弁論準備手続における②相手方の主張する③自己に不利益な④事実の陳述である。

(2)本件では、Yは本件訴訟の口頭弁論で(①)、Xの主張するAX間売買という事実を主張している(②④)。③は基準の明確性から主張立証責任の所在から考える。上記両訴訟物の請求原因にはXの所有権取得原因事実が入るため、AX売買はXの主張すべき事実である。よって、Yに不利事実といえる(③)。よって、Yの陳述は裁判上の自白であるといえる。

2.①では、XYの訴訟でYが自白をし、それからWが義務承継人の訴訟参加(51条前段)をした場合にYの自白を参加したZが争えるかが問題となる。

(1)既判力は「口頭弁論終結後の承継人」(115条1項2号)に及ぶ。そして、既判力が生じていない段階である訴訟継続中でも生成中の既判力を観念できるため、「承継」(51条前段)人にも訴訟状態を及ぼすのが妥当である。よって、自白が生じた訴訟に参加した参加人は自白の事実を争えない。

(2)本件では、Yが自白をした後にZが訴訟に参加している。よって、Yの自白はZがそれを争えないという民訴上の意義を有する。

3.②では、ZがXYの訴訟に参加した後のXYZ間の訴訟でしたYの陳述が自白として成立しZに影響するかが問題となる。

(1)義務承継人の訴訟参加を規定する51条前段は47条4項を準用し、同項は40条1項を準用する。よって、参加後の訴訟人の行為は「全員の利益においてのみ」効力を生じる。

(2)本件では、Wは本件訴訟で、AX間で本件売買契約が締結された事実はないことを理由にXの所有権を争う姿勢である。それに対してYの自白は本件売買契約の存在を正面から認めるという自白であり、Zの「利益」とならないものである。よって、Yの自白は成立せず、Yの陳述は民訴上意義を持たない。

4.③では、Yが義務承継人として訴訟引受けをした場合にYの自白が成立しZに影響するかが問題となる。

(1)義務承継人の訴引受けを規定する50条の3項は、同時審判申出訴訟の規定(41条1項)を準用している。よって、義務承継人が訴訟を引き受けたとしても、同訴訟は通常共同訴訟であり、39条の規律を受ける。39条の趣旨は通常共同訴訟は各共同被告人の意思を尊重するという弁論主義を貫徹する点にあるから、一方の共同訴訟人の主張は他方に影響しない。

(2)本件でも、Yの自白は成立するが、Zに影響を及ぼさない。よって、Zとの関係で民訴上の異議はない。

以上。