娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

中大2017民訴

1.(1)について

(1)訴訟物とは、原告の主張する一定の権利または法律関係をいう。

(2)本件では、原告である甲は乙への貸金返還債務が150万円を超えて存在しないことを主張しているため、債権全体の額である1000万円から150万円を引いた850万円の不存在を主張しているといえる。よって、本件訴訟物は消費貸借契約に基づく850万円の貸金返還請求権である。

2.(2)について

(1)確認訴訟は給付訴訟と異なり、対象が無限定であり必ずしも紛争解決に至らないため、厳格に判断されるべきである。①対象選択の適否、②即時確定の利益、③方法選択の適否を判断すべきである。

(2)確かに上記のように甲は債権の不存在という消極事項を確認している。しかし、甲は債務者であるから、積極的確認の手段を持たない。よって、対象選択は適切である(①)。また、甲は乙から顔を合わせるたびに貸金返還の催告を受けており、両者で紛争が生じているから、乙の法的地位に危険・不安が生じており即時確定の利益もある(②)。そして、甲は債務者で給付訴訟を提起できないため方法選択も適切である(③)。したがって、確認の利益は認められる。

3.(3)について

 裁判所は250万円を超えて貸金返還債務が存在しないとの判決主文をかけるか。一部認容判決が申立事項拘束主義(民事訴訟法246条)に反しないか。

(1)同条の趣旨は私的自治の訴訟法的反映であり、機能は相手方の不意打ち防止である。よって、①原告の合理的意思に反しないで、②被告の不意打ちにならなければ同条に反しない。

(2)一部認容でもしてもらいたいのが甲の意思に沿い(①)、当初の150万円より多い250万円の存在が認定される分には乙に不意打ちとならない(②)。したがって、裁判所は「原告の被告に対する債務は250万円を超えては存在しない。」との主文を書くべきである。

4.(4)について

(1)裁判所の迅速・弾力的な判断を可能とする趣旨から、既判力は原則として「主文」(114条)に生じる。また、既判力は手続保障の与えられた「当事者」(115条1項1号)に原則として生じる。

(2)本件「主文」は(3)のようになるため、本件貸金債務が250万円分存在することについて「当事者」甲乙に既判力が生じる。

以上。