娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

中大2018憲法

1.児童ポルノに当たる画像を送信するよう未成年者に対して求める行為を処罰する法律(以下、本件法律)は、未成年者の表現の自由憲法21条1項)を侵害するものとして違憲である。

(1)「表現」とは、内心の外部への表出行為である。児童ポルノに当たる画像を相手に送ることは、画像を通じて相手方に画像内容を表出するものであるため、「表現」といえる。よって、児童ポルノに当たる画像を送信する自由が未成年者に保障されている。もっとも、本件では未成年者に対してそのような画像を求めることが処罰されることが本件法律の中身となっており、未成年者の本件表現の自由が委縮する結果、本件表現の自由が制約されている。

(2)確かに表現の自由は、個人が言論活動を通じて自己の人格を発展せるという個人的価値、言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという民主制に資する社会的価値を有する。しかし、未成年者が児童ポルノに当たる画像を送信すればそれが相手方によってインターネットに公開されたりして、身も心も成長過程にある未成年者に不可逆的な損失が生じるおそれがある。そうすると、児童ポルノに当たる画像を送信する自由は自己加害を発生させる自由であり、重要とは言えない。また、本件法律は未成年者に画像を送るように求めた者が罰せられるのであり、未成年者自体が罰せられるわけではないため、制約は弱いといえる。

(3)そこで、目的が重要で、手段により制限的でない代替手段がなければ合憲である。

(4)本件法律の目的は害悪告知が用いられない「自我撮り被害」の防止にある。2016年までこの被害件数が増え続けており、480人にも上っている。480人という数字は大きいから、この中には害悪を告知されていなくとも画像を送ってしまったものも一定数いると考えられる。よって、害悪の告知がない画像を求める行為を罰する本件法律の目的は重要である。

 「自我撮り」のポルノ画像を求める相手方が罰せられる手段をとれば、確かに未成年者に対して画像を送信する意欲への委縮効果が働く結果、「自我撮り被害」の件数は減るため、本件法律の手段と本件目的との間には適合性がある。しかし、相手方を罰するという重い手段をとらなくても、未成年者に対して指導をするということで対応できる。この方法の方が事後的な措置であるから未成年者の本件表現の自由への制約は弱いといえる。よって、より制限的でない代替手段があるといえる。

2.以上から、本件法律は21条1項に反し、違憲である。

以上。