娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H25行政法

第1.設問1

1.本件では、Cは本件マンションの設計を変更させることが必要不可欠であると考えており、A市長に本件マンションの設計の変更命令(景観法17条1項)をしてもらいたいと考えているといえる。そうすると、Cは「行政庁が…処分…をすべき旨を命ずることを求める」(行政事件訴訟上(以下、行訴)3条6項柱書)者である。また、Cには景観法上、申請権が認められていないため、同項2号の形態での訴訟は認められない。よって、Cは同項1号の非申請型義務付け訴訟を提起すべきである。

2.また、上記命令は、Cが届出(景観法16条1項柱書)をした2013年7月10日の「30日以内」(同法17条2項)でしか認められないものであるため、同月14日である現在においては、直ちに上記命令を発してもらう必要がある。よって、「緊急の必要」がある。また、本件マンションによる景観の破壊は、本件マンションを解体することでしか解消できない。しかし、そのような解体は非現実的であり、本件マンションが完成すれば、永続的に景観は害されることになる。よって、「償うことのできない損を避けるため」といえる。よって、Cは仮の義務付け(37条の5第1項)も申し立てるべきである。

第2.設問2

非申請型義務付け訴訟の訴訟要件は、①「一定の処分」(行訴3条6項1項、37

条の2第1項)、②原告適格(同条3項)、③「重大な損害を生ずるおそれ」(同条1項)、④補充性(同項)、⑤被告適格(行訴38条1項、11条1項1号)、⑥管轄(行訴38条1項、12条1項)である。

1.「一定の」とは、裁判所が審理、判断可能な特定性をいう。

 本件訴訟は景観法17条1項の命令を求める者であり、裁判所は「良好な景観のために必要があると認められるとき」という要件を審理、判断することになる。よって、裁判所が審理判断可能な程度の特定性はあるため、「一定の」といえる。

 また、「処分」とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

 本件処分は、A市長が一方的にするものであり、公権力性がある。また、上記命令でBは本件マンションの設計の変更をする義務を負うことになるため、Bの権利義務への直接的規律もある。よって、「処分」ともいえる。

 したがって、「一定の処分」(①)といえる。

2.「法律上の利益を有する者」とは、当該処分がされないことにより自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害される恐れのある者をいう。そして、当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含む場合には、このような利益も上記法律上保護された利益にあたる。処分の名宛人以外の者は行訴9条2項を踏まえて判断する(行訴37条の2第4項)。

 確かに上記命令の根拠法令である景観法17条1項は、「良好な景観」を守るための規定である。また、景観法の目的は、「良好な景観」の「促進」にある(同法1条)。そして、同法2条は「良好な景観」に関する基本理念を定めているし、同法6条は「景観」に関する住民の責務を定めており、同法8条は景観計画に関するさだめである。そうすると、景観法は、不特定多数者の景観利益という具体的利益を一般的公益としては保護しているといえる。もっとも、景観利益は、景観を害する物の近くに住んでいれば大きく害されるというものではない。また、景観が害されたとしても、周りの者が反復継続して重大な不利益を被るわけでもない。そうすると、景観法は景観利益を個々人の個別的利益としては保護していないといえる。よって、Cは法律上保護された利益を有しないため、「法律上の利益を有する者」とはいえない。よって、Cは原告適格を有しない。

3.同様にして、Cに関して、「重大な損害を生ずるおそれ」はない。

4.また、Cは損害賠償等の民事訴訟によるべきであり、補充性は認められない。

5.被告適格は、A市長の属するA市である(⑤)。

6.管轄は、A市又はA市長の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。

7.以上から、訴訟要件を満たさない。

以上