娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H26刑事実務基礎科目

第1.設問1

1.刑事訴訟規則208条3項に基づいて、「訴訟関係人」であるAの弁護人は裁判長に対して「釈明を求め」(同1項)るように要求する。

2.求釈明を求める事項                    

(1)本件証明予定事実記載書(以下、同書)の第1の3には、「強盗の共謀を遂げた」との記載がある。ここには共謀の成立態様が記載されていない。それが明らかでなければ正犯意思の有無が明らかにならず、車の提供が共同正犯(刑法60条)なのか幇助犯(62条1項)の区別がつかない。よって、この点について求釈明要求をする。

(3)同書の第2の1には、「後頭部を殴打されたことなどにより」との記載がある。この「など」とは殴打によるものか、転倒によるものかが不明であり、バットが使用されたかが不明な記載となっている。傷害態様は被告人の防御にとって重要である。よって、この点について求釈明要求をする。

第2.設問2

1.弁護人は、刑事訴訟法(以下略)316条の15第3項1号イ、ロに基づいて、同1項の証拠類型と開示の理由を示す必要がある。

2.316条の15第1項4号に該当するバットの鑑定書

 本件では、検察官は甲3号証によってBがVを殴ったことを証明しようとしている。Vがバットで殴られればバットにVの血痕やDNAが付着していることが考えられ、鑑定書のバットに付着していたものに関する記載が甲3号証の証明力を左右することになる可能性がある。

3.同5号ロに該当するVの供述録取書

 本件ではVは甲4号証の中で被害状況を語っている。Vはこの前に警察官に対して通報したはずであり、その時に調書とられているはずである。この時の調書と、甲4号証を比較することは甲4号証のVの供述の信用性を確かめるために必要なことである。

4.同6号に該当する目撃者の供述録取書

 本件では甲2号証は犯行現場の状況を立証趣旨とするものである。それが示す状況と、通行人である目撃者が感じた状況を比較し、甲2号証の証明力を吟味することは有意義である。

第3.設問3

1.本件でAに成立する犯罪は、窃盗罪の幇助犯(刑法62条1項、235条)にとどまる。①幇助犯である点、②窃盗罪である点に分けて説明する。

2.①について

(1)確かに事後的にAはBから10万円のうち2万円を受け取っている。しかし、その額も20パーセントにとどまり、少ない。よって正犯意思がなく、共謀がなかったことが推認される。また、Aは金に困っておらず、ひったくりが成功した際に分け前がもらえるかどうかについて聞くことはしなかった。報酬を要求しなかったことは、動機がなかったこと、ひいては正犯意思がなかったことを推認する。

(2)本件では「俺だけ車から降りてひったくりをする」といわれていた。Bが車の運転をしたのは自分がひったくりをしないことが重要な要素となっており、もっぱらBがひったくることを認識していたからこそのことである。このような考え方からは正犯意思がないといえる。

(3)以上から、正犯意思が認められず、共同正犯ではなく、幇助犯にとどまる。

3.②について

(1)AがBから聞かされた犯行計画は、ひったくりをするというものであった。確かにひったくりのために車の運転を頼まれたのは初めてであるため、実際にどのような方法で行為を行うかはわからなかった。しかし、Aはこの時、通行人のすきを狙ってかばんを奪うといった典型的なひったくりを想像していたし、Bがバットを所持していたことについて終始気付かなかった。

(2)以上から、反抗抑圧程度の有形力の行使である強盗罪の「暴行」を行うという認識はなく、強盗罪の故意がない以上、窃盗罪の成立にとどまる。

第4.設問4

検察官はBが公判でしたAからバットの使用を勧められた旨の供述を用いて、Aの主張を認められないものにすることが考えられる。そこで、Aの公判でBの上述の供述が記載された裁判官面前調書(321条1項1号)を請求する。また、証人尋問による場合は、BがAの目の前では喋りたくないと思っていることから、遮蔽措置(157条の5)によるべきである。

以上。