娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H26憲法

※21条1項、22条1項パターン

 

第1.設問1

本条例は憲法(以下略)21条1項の消極的結社の自由、22条1項の営業の自由に反し、違憲であると主張する。

1.21条1項について

 同項は積極的な結社の自由を保障しており、表裏の関係にあるものとして特定の団体に加入しない自由も保障している。よって、A市内に店舗を構える事業主(以下、本件事業主)には商店会に加入しない自由(以下、不加入の自由)が同項によって保障される。

 本件では、商店会への加入が義務付けられ、本件事業主の不加入の自由は制約されている。

(1)A市では商店会に加入すれば、会費を毎月納入することやイベント費用を賄うことになる。どのような活動に賛成し、どのような活動を行うかは自律的な判断にゆだねられるべきだから、本件不加入の自由は重要な権利である。

(2)また、加入義務に違反すると営業停止を受けるのだから、事業主にとって加入しない道は残されておらず、制約は重大である。

(3)以上から、目的が必要不可欠で、手段が必要最小限度でなければ違憲となる。

(4)本条例の目的は、①すべての店舗が協力することによる集客力の向上と、②大型店を含めた防犯体制の確保である。前者の全店舗の協力はA市内で不可欠とも思える。しかし、大型店等が加入しても集客力が向上するとは限らない。また、後者については商業活動を行う事業主が多ければ強固な防犯体制が構築されるとは限らない。よって、①②の目的は不可欠とまでは言えない。

 また、手段は商店会に強制加入させた事業主から会費を強制徴収するものである。A社のような強制徴収に反対する事業主は存在し、このような事業主は共同でイベントを開催するなどの活動に非協力的になるだろうから、そもそもこの手段では店舗の協力が望めない。また、そのような非協力的な事業主は多店舗と協力して防犯を徹底するとは考えられない。よって、手段は①②の目的を促進せず、手段適合性すら認められない。

 以上から、本件条例は同項に反し、違憲である。

2.22条1項について

 同項の職業選択の自由を実質的なものにするために、同項は営業の自由をも保障していると解釈すべきである。よって、本件事業主にもA市内で営業する事由が認められる。

 また、本条例の加入義務を怠れば営業停止がされることから、A市内で営業不可能となり、制約が認められる。

(1)職業は自己の人格的価値とも不可分の関連を有する。よって、営業の自由は重要なものである。

(2)また、営業停止は経済活動そのものを中止させ、その間の売り上げをなくすものとして規制が重大といえる。

(3)以上から、目的が重要で、手段に実質的関連性がなければ違憲となる。

(4)上述の通り、目的は重要でなく、手段の適合性が認められず、違憲である。

第2.設問2の反論

1.商店会不加入の自由は自己実現と関係しないため重要ではない。また、本条例は実質的に金銭の支出を義務づけるにすぎず、制約も重大ではない。よって、原告の基準は妥当しない。

2.また、目的にはA市の商業活動活発化という積極目的が含まれており、本条例の内容にはA市の裁量が認められる。よって、原告の基準は妥当しない。

第3.設問2の私見

1.消極的結社の自由は本来、個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的価値を有する。本件のような特定の商店会に加入したからといって、本件事業主の自己実現は妨げられない。また、大型店等がA市から生じた利便にタダ乗りした分を支出させられるにすぎない。よって、目的が重要で、より制限的でない代替手段がなければよい。

2.確かに被告の反論の通りA市の裁量は大きい。もっとも、②の目的は消極目的であるから、制約態様を重視して基準を決めるべきである。本条例は、大型店の規模という自助努力脱却可能性が認められない要素を基準に、毎月納入する額が50倍という大きな差をつけるものである。よって、制約は重大であり、目的が重要で、手段に実質的関連性があればよい。

3.①について

 本件では商店街が不活発となっており、①の達成を必要とする立法事実があるから、①は重要である。もっとも、商店街を活発にしたければ、商店会に無理やり加入させるよりも加入しない事業主が集まれる場を月1回開催するなど、コミュニケーションをとる方法が考えられ、こちらの方が①に資すると考えられる。よって、より制限的でない手段があり、21条1項に反し違憲である。

4.②について

 本件では防犯面で問題が起きており、②の達成を必要とする立法事実が認められるから、②は重要である。もっとも、大型店に営業停止がされれば、A社のように収益が減退し、経営状態が悪くなる。経営状態の悪い事業主が防犯体制にコストを割く余裕などない。よって、本当に意味のある手段とは言えず、実質的関連性がなく、22条1項に反し、違憲となる。

以上。

 

 

 

 

 

 

※22条1項パターン

 

第1.設問1

1.本条例は大型店やチェーン店(以下、大型店等)の営業の自由(憲法(以下略)22条1項)を侵害するものとして違憲であると主張する。

(1)同項は職業選択の自由を保障している。もっとも、営業ができなければ選んだ職業を遂行できないため、営業の自由も同項で保障される。よって、大型店等がA市内で営業する自由は同項で保障される。なお、大型店等は法人であるが、営業は法人名義で行われるから権利の性質上法人にも認められるものである。本条例は商店会への加入を義務付け、商店会に入らなければ営業停止するという内容であるから、大型店等の営業ができなくする営業の自由を制約するものである。

(2)大型店等の職業は、大型店等が収益を上げる意味のみならず、分業社会における社会的機能分担の活動たる性質を有し、事業主の人格とも不可分の関連を有するため、重要なものである。また、制約態様が商店会に加入させるというものである。21条1項は積極的結社の自由のみならず表裏のものとして不加入の自由である消極的結社の自由も保障している。商店会への加入が強制されれば同自由も制約されるため、商店会の活動に賛成しない事業主は営業を断念せざるを得ない。よって、営業の自由への制約は重大なものである。以上から、目的が重要で、手段に実質的関連性がなければ違憲である。

(3)本件目的は、①市内の商業活動の活性化、②商店会を防犯体制の担い手とする点にある。①について、大型店等はセールを行うことでむしろ活性化に協力しており、これ以上活性化させる必要はなく、不当な目的である。②については、防犯体制を担わせるのは全店舗である必要がなく、重要な目的ではない。仮に①②が重要だとしても、本件手段は商店会への加入を強制するものである。確かに一般的には商店会に加入させれば店舗間の協力が見込め商業活動が促進され、防犯体制が強化されるため、合理的関連性はある。しかし、本件ではそもそも商店会に加入しなくても支障のない大型店等が進んで協力するとは限らない。よって、①達成に必要な手段といえず、実質的関連性を欠く。また、防犯体制についても商店会に加入したからといって大型店等が他の商店の防犯にまで目を配るとは限らない。よって、②達成に必要といえず、実質的関連性を欠く。

2.以上から、本条例は22条1項に反し、違憲である。

第2.設問2

1.反論

(1)商店会への加入が強制されても、営業上の消極的結社の自由に対する制約しか生じないため、大型店等の事業主が営業を断念することが強力な制約とは言えない。

(2)上記①の目的は、積極目的規制であるから、A市の立法裁量が広い。

(3)以上から、目的が正当で、手段が合理的関連性を有するといえればよく、本件ではそう言える以上、本条例は合憲である。

2.私見

(1)消極的結社の自由が一般的に重要であるとされるのは、結社が共同の目的のためにする特定の多数人の継続的な精神的集合体であり、加入しないことが自己の人格の決定につながるからである。本条例が加入を強制するのは商店会という営業上の結社である。営業上の結社は対外的な意見表明という側面を有しないため、重要な消極的結社の自由とは言えない。よって、被告の反論は妥当とも思える。しかし、本条例が定める商店会への加入があれば、最大で会員が納入する金額は平均の50倍ともなるようなものである。そのような大金が没収されればビジネスが成り立たなくなるため、営業を存続させることが困難となる。よって、営業の自由への制約が重大でないとは言えない。

(2)①の目的は社会経済政策目的であるから、積極目的である。もっとも、②の目的は消極目的であり、本条例には目的が混在している。このような場合に裁判所の審査能力が決まらず、審査基準を一概に決めることはできない。そもそも職業の自由に対する規制には多種多様なものが存在する。よって、規制の目的・必要性・内容、職業の自由の内容、性質、制限の程度等を比較衡量して総合的に基準を判断すべきである。本件では、原告の主張にあるとおり営業の自由は重要な価値を有する。また、上記のように制約が強いため、原告の主張する基準による。

(3)本条例の目的は、上記①②である。①について、A市では大型店等の利便の「タダ乗り」が非難の対象だった。このような非難を払拭することが必要であるから、大型店を含めた商業活動の活性化は重要な目的である。そして、②について、A市の一部ではシャッター化による防犯面で問題が生じている。そうすると、防犯体制はA市内の商店が一丸となって確保するのが望ましく、大型店等を含めた防犯体制の構築は重要な目的である。もっとも、本件手段は商店会への加入である。商店会に加入しなくても営業に支障がない大型店等は、加入商店との関係を良好にする気はないといえる。商業活動の活性化にはそのような良好な関係が不可欠であるから、①との関係で手段は実質的関連性を有しない。また、シャッター化が起きているのは古くからある商店の多くについてであり、大型店を防犯体制に組み込んだとしても大型店等は積極的に防犯面を強化する意思を有するとは思えない。よって、②との関係でも実質的関連性を欠く。

(4)以上から、本条例は22条1項に反し違憲である。

以上。

 

 

 

 

 

 

 

※21条1項パターン

 

第1.設問1

1.本条例は憲法(以下略)21条1項の消極的結社の自由を侵害し、違憲とならないか。

(1)「結社」とは、共同の目的のためにする特定の多数人の継続的な精神的集合体である。商店会は商店街の運営を向上させるという共同の目的を持ち、特定区画の店舗が多数加入する集合体であり、「結社」である。よって、大型店やチェーン店(以下、大型店等)には商店会に加入する自由は同項により認められる。そうすると、表裏の自由として大型店等には商店会に加入しない自由も認められるといえる。なお、法人である大型店等にも消極的結社の自由は権利の性質上認められるものである。本件では商店会への強制加入となっており、大型店等の消極的結社の自由が制約されている。

(2)商店会はそれぞれの方針を有し、加入店舗が一丸となって問題に対応するという性質を持つ。そうすると、商店会に加入するかしないか、するとしてもどの商店会に加入するか選択する自由である消極的結社の自由は、重要な権利である。また、本条例は、商店会に納入すべき毎月の会費を、売場面積と売上高に一定の率を乗じて案出される金額と定めている。大型店Bのように広大な土地で売り上げが高い大型店等にとっては、商店会に加入した場合に受ける会費の金額が莫大になり、制約は強度のものである。そうすると、目的が必要不可欠で、手段が必要最小限度といえなければ違憲となる。

(3)本条例の目的は、①すべての店舗が協力することによる商店街の活性化と、②大型店等を含めた防犯体制の確立である。①について、確かにA市では古くからある商店街の活性化が喫緊の課題となっていた。しかし、活性化するのは商店会に進んで加入する店舗がしていけばよく、全店舗が活性化に貢献する目的は不当である。また、②についても、確かにA市内では防犯面での問題が生じている。しかし、防犯体制が各店舗で徹底すべきであり、全店舗を防犯体制の担い手とする目的は不当である。仮に目的が必要不可欠だとしても、商店会への強制加入という手段は、いやいや加入する店舗を生み出すことにつながり、むしろ①②を阻害する。よって、手段は①②の目的を促進せず、必要最小限度でもない。

2.以上から、本条例は21条1項に反し、違憲である。

第2.反論

1.本件結社は商業的なものであり、権利が重要とは言えない。

2.大型店等は商店街の利便にタダ乗りしているため、その分を徴収することは制約の重大性に寄与しない。

3.よって、原告の審査基準を下げるべきである。

第3.私見

1.消極的結社の自由は本来、個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという自己実現の価値、言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという民主制に資する社会的価値を有する。A市内の商店会は、会費を毎月納入し、防犯体制の確立、商店街での活動に貢献するという性質を持つ。このような商店会に加入していても、政治的結社等とは異なり、客観的に見て自己の見解を表明させられるものでもなく、政治的意思決定とも関係を持たない。このように商店会は専ら営利的な結社であり、本件消極的結社の自由は権利が重要といえる基礎を欠く。よって、被告の反論が妥当する。

2.また、本件ではA市内で活動をしている大型店等は、商店会の会費によって賄われている費用で開催するイベントに乗じることで莫大な利益を得ることが可能となっているといえる。このようにして得た利益を公平に分配することは、A市内で店舗を構えることを決断した大型店等の事業主は受忍すべきことといえる。そうすると、制約は重大ではない。

3.そうすると、目的が重要で、手段が実質的関連性を持てば合憲であると考える。本件では、上記①②の目的が存在する。①は古くからある商店街の活性化が喫緊の課題であり、活性化させることを必要とする立法事実が存在する。よって、①は重要である。また、A市内に古くからある商店街の多くがシャッター化しており、防犯上の工夫をする必要とする立法事実がある。よって、②の目的は重要である。本件手段は商店会への強制か縫うである。確かに商店会のメンバーが増えることによって会費が増え、①②が抽象的には促進される。しかし、いやいや加入した大型店等が既存の店舗と協力することなしには、商店街の活性化は望めない。よって、手段は①との関係で実質的関連性を有しない。また、莫大な会費が徴収されれば、自分の店舗に対する防犯体制に対する費用まで徴収されてしまう。よって、A市内での防犯体制は確保されず、②との関係でも実質的関連性を有しないといえる。

4.以上から、本条例は21条1項に反し、違憲である。

以上。