娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H26行政法

第1.設問1

1.行政事権手続法(以下、行手)上の利点

 本件不許可処分を占用許可申請を拒否する処分と理解する法律論(以下、①)では、その申請は法39条1項に基づく「申請」(行手2条3号)ととらえられるため、本件不許可処分は申請に対する処分となる(行手2条4号柱書但書ロ参照)。一方で、本件不許可処分を占用許可の撤回処分ととらえる法律論(以下、②)では、本件不許可処分は「不利益処分」(同柱書)となる。そうすると、②によれば、Cは「意見陳述」(行手13条1項柱書)の機会が与えられるという利点がある。

2.行政事件訴訟法(以下、行訴)上の利点

(1)①では、Cが本件不許可処分を取り消しただけでは法39条2項の「許可」はCに与えられないため、Cは本件敷地を占用することはできない。よって、Cは取消訴訟(行訴3条2項)のみならず(行訴37条の3第3項2号参照)、申請型義務付け訴訟(行訴3条6項2号)を提起する必要があり、その本案において37条の3第5項の要件を満たす必要がある。一方で、②では、Cが本件不許可処分を取り消しさえすれば、撤回が取り消されるため、Cは本件敷地を占用することができるようになる。このように②によれば、Cには申請型義務付け訴訟の本案で勝訴する必要がなく、取消訴訟の本案で勝訴するだけで良いという利点がある。

(2)また、①では仮の救済である仮の義務付け(行訴37条の5第1項)の申立てで、「償うことのできない損害」を主張しなければならない。一方で、②では仮の救済である執行停止(行訴25条2項)で、「重大な損害」を主張するだけでよい。このように、②によれば、Cの主張する損害の程度は小さくて良いという利点がある。

第2.設問2

1.(1)について

 Cの主張する法39条2項は、「しなければならない」という文言で規定されており、形式的には原則として許可がされるべきことを示している。また、同項の趣旨は、「水産業の健全な発展及びこれによる水産物の供給の安定」(法1条)という法の目的に照らして、漁港内の土地の占用をしたい者になるべくその土地を占用させる点にある。そうすると、法39条2項は、実質的にも原則として許可がされるべきことを示している。

 一方で、A県の主張する地方自治法238条の4第7項は、「できる」という文言で規定されており、形式的には行政庁に裁量が与えられることを示している。また、同行の趣旨は、行政財産をどのように利用するかは、各地方公共団体内の事情に合わせて、各地方公共団体に委ねる点にある。そうすると、同項は実質的にも行政庁に裁量を与えている。

 このように、A県の主張する同項に基づく法律論によれば、Cの主張する法39条2項の基づく法律論よりも、A県知事による本件不許可処分の適法性が認められやすくなる。

2.(2)について

(1)法39条2項の上記趣旨からすれば、認める必要性が低いような占用は同項の規範から除外されるべきである。よって、法1条の目的を促進しない占用は法39条2項で判断されない。

(2)本件では、確かにCは店内の内装工事を行っており、客その変化へ対応しるという工夫をしている。しかし、Cがターゲットとしているのは一般利用者という魚市場と何ら関わりがないものであり、Cの占用は法1条の目的を促進しない。また、魚市場は2012年に完全に廃止されており、これから魚市場関係者が日常的にCの飲食店を利用することは考えづらく、この見地からもCの占用は法1条の目的を促進しない。

2.よって、A県の法律論は認められる。

以上