娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

慶応2014憲法

1.本件不許可処分はXの取材の自由(憲法(以下略)21条1項)を侵害し、違憲とならないか。

(1)報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものである。よって、報道の自由は受け手を前提とする「表現」(同項)として保障される。また、その報道が正しい内容を持つためには、取材の自由も十分尊重に値する。よって、本件でもXがAを取材する自由は十分尊重に値する。

 本件不許可処分は、XとAとの面会を許可しないものであり、Xの取材の自由を制約している。

(2)XはAの死刑の是非に関する特集をC誌で組むことを決意しており、これは死刑の是非を報道するための取材である。死刑の報道をすることができれば、国民が死刑について深く考える機会となる。よって、本件取材の自由は重要である。ここで被告から、取材の自由は十分尊重に値するにとどまり、重要な権利ではないとの反論がありうる。しかし、本件取材のきっかけにおいては、死刑制度に関する自分の考えを世に知らしめたいとのAの希望があった。そうすると、本件取材は、国民のためだけではなく、Aの自己実現のためのものでもあるため、本件取材の自由は重要である。

 また、AはB拘置所に収容されており、XがAを取材するためには面会するしかない。そうすると、面会の機会を奪う本件不許可処分が本件取材の自由を制約する程度は強度である。

 そうすると、本件不許可処分の違憲性は厳格に判断されるべきであるとも思える。ここで被告から、刑事施設の長は面会の許可不許可について広い裁量を有するとの反論がありうる。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律114条1項の趣旨は、刑事収容施設においては同施設の事情についてよく知る刑事施設の長の裁量を認める点にある。よって、被告の反論通り、裁量が認められる。

(3)よって、本件不許可処分が許されるためには、刑事収容施設の規律及び秩序の維持上放置できない程度の混乱が生じる相当程度の蓋然性があれば足りる。

(4)本件では、Aは家族との接見が許されており、実際に面会が行われた。このとき何ら混乱は生じなかったのであり、Aが他人と接見することによって、混乱が生じるという事態は考えづらい。そうすると、Xとの接見においても混乱は生じないと考えられる。ここで被告から、FがGの名誉棄損的な記事を欠き、結果Gが職員を殴るという事件が発生しており、XがAについて書く記事の内容によっては、同様の事件が起こり、放置できない程度の混乱が生じる恐れがあるとの反論がありうる。しかし、XはAの死刑制度に関する考えを知らしめたいとの希望を実現するために本件取材をするのであり、XがAの希望に沿わない記事を書く可能性はほぼない。そうすると、上記混乱が生じる相当程度の蓋然性はないといえる。

2.以上から、本件不許可処分は違憲である。

以上