娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

慶応2015憲法

1.表示法4条、5条、15条は事業者がPP、PIによる広告放送をする自由(憲法(以下略)21条)を侵害し、違憲とならないか。

(1)「表現」とは、内心の外部への表出である。事業者が自己の商品を売りたいと考えた場合に、番組に商品を登場させることは、内心の外部への表出であるため、PP、PIの形態による広告放送の自由は同条により保障される。

 表示法4条1号、2号はそれぞれPP、PIを定め、同条柱書で「次の各号のいずれかに該当する広告をしてはならない。」と定めていることから、PP、PIが表示法で禁止事項とされているといえ、PP、PIの広告放送の自由は制約されている。

(2)確かに一般的には、広告を行うことは視聴者の意思決定に資するものであり、受け手への情報伝達という価値からして重要でないとは言えない。しかし、PP、PIは事業者が行ったとしても、視聴者の自律的かつ合理的な選択を阻害する場化rである。また、PP、PIは営利的な見地から行われるものであり、事業者の人格が発展するわけでもなく、政治的意思決定に関与する価値もない。よって、本件自由は重要でない。

 もっとも、表示法4条柱書は上記のようにPP、PIを禁止した上で、同法はPP、PIの差し止め(同法5条)、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金(同法15条)という事業者に対する重大な不利益を課していることからすれば、制約は重大である。

(3)よって、目的が重要で、目的と手段に実質的関連性があるかを判断すべきである。

(4)近年テレビ番組の録画技術の向上により、視聴者がスポットCMをskipすることに対処するため、PP、PIが主流になっており、PP、PIの件数は増加すると考えられる。そして、PP、PIは「刷り込み」や「洗脳」という視聴者の意思決定を阻害する方法によって、視聴者の不合理な意思決定と引き換えに企業に多大な利益を与える、不当なものである。このような不当な広告形態が増えることに国会は規制で対抗する必要があり、表示法4条、5条、15条の目的を定めた1条の「一般消費者の利益の保護」は重要である。よって、木庭は重要である。

 同法4条で、PP、PIを禁止したのに上、5条、15条でそれぞれ差し止め、刑罰を定めれば、事業者に対するPP、PIの抑止となり、各条の手段は目的を促進する。

 確かにPP、PIという憲法上保障される行為を差し止めたり、懲役刑を科す必要はないとも思える。しかし、PP、PIが行われれば、その番組を見た視聴者には不合理な意思決定という害悪が直ちに発生するため、差し止めは必要である。また、PPでは飲料水を番組に置くだけで100万円、PIでは番組制作に10億円(参考資料1参照)という大金が動くことからすれば、300万円以下の罰金だけでは罰金覚悟でPP、PIをする事業者が発生しかねない。よって、2年以下の懲役を必要である。

 また、懲役期間が上限2年だとしても、これは長期間と言えず、相当である。そして、差し止めを内閣総理大臣が決定するとしても、不均衡とはいえず、相当である。

 よって、目的と手段に実質的関連性がある。

2.以上から、表示法4条、5条、15条は合憲である。

以上