娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

慶応2017憲法

1.設問1について

 私は、条例4条、8条はXのような登山者の「幸福追求」(憲法(以下略)13条後段)を侵害するものであり、違憲であると主張する。

(1)同後段は国民の「幸福追求」権が保障されている。確かに同後段は個人の人格的生存に不可欠な権利利益ととらえる見解もある。しかし、そのように考えると同後段の保障範囲が狭くなりすぎ、範囲が不明確になる。そうすると、同項は国民の一般的行為の自由を保障している。本件でも、Xのような登山者には「危険地区」(条例2条)で登山をする自由が同後段で保障される。もっとも、登山者は「危険地区」で登山をする際に届出をする必要があり(同4条柱書)、これに反すると過料(同8条)に処せられることから、行為面・経済面から同自由が制約されている。

(2)登山は健康増進にも資するものであり、これをする自由は重要である。また、登山をする者には一般市民が多く、一般市民に対しては5万円という過料の額は大きい。よって、制約は重大である。

(3)よって、目的が重要で、目的・手段に実質的関連性がなければ違憲となる。

(4)確かに本件では、軽装備での安易な登山による事故が多発しており、避難件数の増加がみられ、国民の生命・身体への侵害を防止すべき立法事実が十分あるため、条例4条、8条の目的は重要である。また、同4条の届出をしなければ過料を科すことで間接的に届出を促進し、事故が防げるとも思える。しかし、届け出をしたとしても当該地区が「危険地区」であることは変わりない。そうすると、「危険地区」であることを示す看板を設置する方が事故を防げるといえる。よって、目的・手段に実質的関連性がない。

(5)したがって、同4条、8条は違憲である。

2.設問2について

(1)確かにXの訴訟代理人としては「幸福追求」権の範囲を一般的行為の自由に広げたいところである。しかし、一般的行為自由説では、人権の保障範囲が広がりすぎる結果、「幸福追」権の価値を希薄化することにつながる。そうすると、「幸福追求」権として保障されるのは、個人の人格的生存に不可欠な権利利益であると考える。そうすると、Xのような登山者が「危険地区」で登山する自由は13条後段で保障されず、条例4条、8条は合憲であるとも思える。

(2)しかし、13条後段は、国が恣意的かつ過剰な制限を課してはならないとの客観法原則を定めているといえる。そうすると、条例4条、8条の規制は目的が正当で、手段が

合理的なものでなければならない。

(3)上記立法事実から目的は正当である。もっとも、届出をさせたとしても装備を軽くすることができる以上、自己を真に防ぐことはできないといえる。よって、手段適合性すらなく、合理的な制限と言えない。

(4)したがって、同4条、8条は違憲である。

以上