娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

慶応2017商法

第1.問1

1.Y社は「公開会社」(会社法2条5号)でない会社であるため、Y社株式は全て「譲渡制限株式」(2条17号)である。よって、Y社では株式譲渡自由の原則(127条)が修正され、Y社株主であるAがCに対してY社株式60株を譲渡する際には、「取締役会設置会社」(2条7号)であるY社の「取締役会」(139条1項)の「承認」(2条17号)を請求し、それが認められる必要がある。それにもかかわらず、本件ではA及びCは136条、137条の手続きをとることはなかったため、Y社との関係で本件譲渡は無効である。もっとも、AC間の間では有効とならないか。

(1)譲渡制限の趣旨は、会社にとって好ましくない株主が登場することを防止する点にある。そうすると、「譲渡制限株式」の譲渡は会社との関係で無効であれば十分であり、当事者間では有効である。

(2)本件譲渡も、会社との関係では無効であるが、AC間では有効である。

問2.問2

1.Bの本件株主総会決議取消の訴え(831条1項)は認められるか。BはY社株式30株を有する「株主」(同柱書前段)であり、決議は平成28年9月1日であり、現在は同月3日であるから、「三箇月以内」といえる。よって、「訴えをもって」、Y社を被告として(834条17号)、提起できる。

2.また、Aは「株主」(299条1項)であるBに対して招集通知を発しておらず、同項違反という「招集の手続」の「法令…違反」(831条1項1号)がある。更に、本件ではAは「取締役」(368条1項)であるBに「通知」を発しなかったため、本件取締役会が無効であり、298条4項違反があるといえないか。

(1)法の一般原則からして、瑕疵のある取締役会決議は無効である。もっとも、法的安定性の見地から、瑕疵があっても決議に影響がない特段の事情があれば、例外的に有効である。

(2)本件でも、原則として無効である。また確かにBが出席することでCが翻意して、3人の「過半数」(369条1項)である2人が反対し決議が否決されることもありうるため、特段の事情がないと思える。しかし、決議事項はCの息子であるEの取締役就任についてであり、Cが翻意することはないといえる。よって、特段の事情があり、例外的に有効である。

(3)以上から、本件取締役会は有効であり、298条4項違反はないため、この点は「招集の手続」の「法令…違反」といえない。

3.30株もの株式を有するBに対して本件株主総会の招集通知をしなかったことは「重大でな」い瑕疵であるとは言えず、「決議に影響を及ぼさない」としても裁量棄却(831条2項)の余地はない。

4.よって、上記訴えは認められる。

以上