娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

慶応2020憲法

1.本件申請の不許可処分はXの集会の自由(憲法(以下略)21条1項)を侵害し、違憲とならないか。

(1)「集会」とは、特定又は不特定の多数人が、一定の場所において事実上集まる一時的な集合体をいう。本件集会は捕鯨・イルカ漁の賛成派・反対派という不特定の多数人が本件施設という場所で事実上集まる一時的な集合体であり、「集会」といえる。よって、本件ではXに本件集会をする自由が保障される。

 また、本件申請の不許可処分は本件集会をする場所である本件施設の使用を拒むものであり、本件自由に対する制約となりうる。ここでY町から、Xは集会の自由という自由権を有するにすぎず、Y町に本件施設を使用させるように請求する権利は有しないため、制約はないとの反論がありうる。しかし、本件施設は「公の施設」(地方自治法244条1項)であり、Y県は「正当な理由」(同条2項)という例外的な自由がない限り本件会館の利用を拒んではならない。本件不許可処分の根拠条文は本件条例6条1号であり、同号は「正当な理由」を具体化したものであるため、本件不許可処分は例外的な処分であるといえる。そうすると、本件不許可処分は原則を否定するものであるため、本件集会に対する制約となる。

(2)Xは本件集会をすることで、イルカ漁に関する様々な意見・情報に接し、これを伝達・交流させることができる。また、Xのイルカ漁に対する反対意見を対外的に表明するために本件集会は役に立つ。よって、本件集会の自由は重要である。ここでY町からの反論として、本件施設は「捕鯨・イルカ漁を守るための社会的活動を支援」(本件条例1条)する趣旨で設けられたものであり、クジラ・イルカ漁に反対する見解を広めるための本件集会は本件施設の趣旨にそぐわない集会であり、この自由は重要ではないとの反論がありうる。しかし、Xは捕鯨・イルカ漁反対派のみならず、賛成派も本件集会に自由に参加できるようにしていたのだから、両論の意見に配慮した集会を開こうとしていたといえ、本件集会の趣旨が本件施設の趣旨にそぐわないとはいえないため、やはり本件集会は重要である。

 また、本件申請は不許可とされており、条件付許可処分と比べても制約は重大であるといえる。

(3)よって、「本件施設の目的に反する」(本件条例6条1号)といえるには、明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合でなければならない。

(4)本件集会はイルカ漁の賛成派と反対派が徹底討論する場であり、話し合いでの解決が期待できることから、明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見されることはない。ここでY町から、XはCのメンバーであり、Cのホームページには「残虐きわまりない」「なんとも野蛮」という語気強くY町のイルカ漁を非難する内容のコラムが掲載されており、Xも同様の意見を本件集会で出すことが予測され、イルカ漁に賛成で前から小競り合いをしていたようなイルカ漁関係者との暴動に発展する可能性が考えられるとの反論がありうる。しかし、XはY町議会でイルカ漁の是非が真剣に議論されることはないと判断して本件集会を決めたのだから、XがCのメンバーであるからといって、真剣な話し合いを通り越した暴動が生じる可能性は観念的なものにとどまる。よって、上記予測はできない。

2.以上から、「本件施設の目的に反する」事情はなく、本件不許可処分は違憲違法である。

以上