娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H23憲法

第1.設問1

1.私は本件制度によってA大学法科大学院に入学することのできる地位が害されているとして、それの地位を確認する実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法4条後段)を提起する。憲法上の主張として、本件制度は男女を差別するものとして平等原則(憲法(以下略)14条1項)に反すると主張する。

(1)同項は、機械的均一的に扱う絶対的平等はかえって不合理な結果をもたらすことから、等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく扱う相対的平等について定めている。そして、男女は等しい地位を有するから、本件入試の際も等しく扱われるべきである。本件制度は、200名中180名以下の20名について女性だけが合格することになっており、男性が合格できなくなっている。よって、相対的平等に反することになっている。

(2)法科大学院は、今後法曹を目指すものにとって最良の教育環境である。よって、そこに入学できる地位は重要な法的地位である。男性は「性別」あたるものであり、性転換は現実的とは言えないため、自助努力によって脱却することのできない地位であるといえる。以上から、目的が重要で、手段に実質的関連性がなければ違憲となる。

(3)本件目的は、法曹における女性の数の増加である。確かに女性の法曹のニーズ自体はある。しかし、昭和60年から平成16年まで法曹三者の割合が一桁前半(裁判官、検事、弁護士がそれぞれ3.3、2.1、4.7%)だったところから二桁(13.2、12.8、12.1%)まで回復しているのだから、積極的に数を増やす必要性まではなく、重要な目的とは言えない。また、確かに法科大学院への入学者数を増やせば女性の法曹の人数も比例して伸びると思える。しかし、入学する女性全員が法曹を目指すとは限らない。よって、それは実質的関連性を欠く手段といえる。

2.以上から、本件制度は違憲である。

第2.設問2

1.被告の反論

(1)A法科大学院には大学の自治(23条参照)があるから、学校側に裁量がある。また、本件制度はアファーマティブアクションであり、裁量に服する事項である。よって、目的が正当で、手段に合理的関連性があれば合憲である。

(2)本件目的は、女性の法曹増加であり、正当なものである。また、手段は定員のうち20名について女性のみを合格させるというものである。そうすると、A法科大学院で勉強する女性が増え、法曹が増える。よって、本件制度は合憲である。

2.私見

(1)23条は学問の自由を定めている。その保障を実質的なものにするために内部行政を大学に任せるという大学の自治が伝統的に認められている。学生管理もその内容の一つであり、学生管理に裁量が認められる。もっとも、アファーマティブアクションは逆差別を生みかねないものであり、14条1項が掲げる機会の平等を奪いかねないものである。そうすると、区別の程度が大きければ審査基準を下げる理由とはならないと考える。本件では、合格者数200名のうち20名のみが女性合格者となることが問題となっている。20名のみであれば全体の1割にとどまり、男女で機会の平等が失われるような大きな区別とはいえない。よって、被告の反論が妥当し、目的が正当で、手段に合理的関連性あれば合憲となる。

(2)本件目的は女性の法曹増加である。法科大学院・新司法試験の目的には多様性が掲げられており、本件目的と一致する。よって、目的は正当である。そして、本件手段は200名のうち下位20名を女性のみ合格させるという方法である。確かに女性の数を増やしたからといって、全員が法曹になりたいと考えるわけではないため、入学者数を増やしても法曹になる女性が増えるとは限らない。しかし、2004年度には法学部の女性はほぼ半分である40%であり、法曹になりたい女性も確実にいると考えらえる。これらの女性に対して入学枠を少しでも増やせば法曹になる女性も増える。よって、目的は手段を促進し、合理的関連性を有する。

(3)よって、本件制度は合憲である。

以上。