娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H24憲法

第1.設問1

私は訴訟代理人として①最高裁判所国民審査法(以下、法)15条1項が、憲法(以下略)79条2項ないし4項に反し違憲である点、②法15条1項が表現の自由(21条1項)を制約し違憲である点を主張する。

1.①について

 本件では、法15条1項によって適格と判断した裁判官に対する記載欄に〇の記号を記載することができなくなっている。79条2項は最高裁判所裁判官の「国民の審査」を保障しているから、このような事態は同項に反する結果、同4項の委任に反しないか。

(1)同2項の趣旨は、裁判官に対して国民が民主的コントロールを及ぼして、司法権(76条1項)の適正を維持する点にある。そうだとすれば、同項、同3項によって裁判官を罷免する制度は、裁判官に対する事後審査権を定めたものであると考えられる。そうすると、積極的に罷免を可としない裁判官であることを意思表示する権利も同条によって保障されることになる。

(2)法15条1項は、「罷免を可とする裁判官」と、「罷免を可としない裁判官」の二つに分け、前者には×を、後者には白票で提出するように定めている。これでは積極的に罷免を可としないことを意味する記号である〇を書いて、意志表示をすることができない。よって、法15条1項は79条2項に反し、同4項の委任の趣旨を逸脱するものであるといえ違憲である。

2.②について

 憲法21条1項の表現の自由は、裁判官を選定することを意思表示する自由を保障している。そのような意思表示は〇を欠くことによってしか行えず、唯一の手段が閉ざされている。よって、法15条1項は21条にも反する。

第2.設問2

1.①について、79条2項は事後審査の制度ではなく、リコール制にとどまるとの反論がありうる。確かに原告の主張の通り、同2項から解釈すれば裁判官の国民審査は事後審査制度と考える余地もある。しかし、同項のすぐあとに規定された同3項は、「多数が裁判官を罷免するとき」に「罷免される」と定めている。この趣旨は、原則として裁判官は罷免されることはなく、その裁判官が不適任であるとの例外的な場合に限って罷免するという点にある。そうすると、同2項の趣旨は、選定された裁判官を国民が選定しなおすという事後審査ではなく、選定された裁判官の罷免を可とする意思表示をすることによって解職させる、リコール制にとどまるというべきである。そうだとすれば、法15条1項の定めが「罷免を可とする」「罷免を可としない」の二つに分ける方法を採用することでも、リコール制の趣旨を全うでき、同項は79条2項ないし4項に反することはない。

2.②について、①で検討した通り、21条によって裁判官の罷免を可としないことを意思表示する自由が保障されるとしても、リコール制を定めた79条2項が21条の特別法であるという関係になるため、79条2項によって制約は正当化される。

以上。