娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H24民法

第1.設問1

1.(1)について

Aに資力があり執行が容易であることを証明すれば、BはAの財産について執行することを主張できるか。BはAから依頼を受けて乙建物に抵当権を設定した者であり、物上保証人である(民法(以下略)372条、351条)ことから、保証人についての検索の抗弁(453条)が類推適用できないかが問題となる。

453条の趣旨は、保証債務が付従性(448条)を有することから、主債務者への財産の執行が可能であればそちらへの執行を優先させて、保証人を保護するという補充性にある。これは、債務者、保証人いずれから弁済を受けても債権者は満足を受けられることを前提としている。それに対して、物上保証の本質は、物権設定の依頼である。物権の設定を受けた物権者は、その財産の換価金から確実に他の債権者に先立って優先弁済を受けることができる期待を有する。仮に物権設定に補充性を認めれば、物権者のそのような期待を害することになる。そうすると、物上保証に補充性は存在しないとすべきである。よって、物上保証では催告の抗弁の趣旨が妥当せず、453条を類推適用できない。

2.前段について

 BはAに対し事前に求償権を行使できるか。事後求償権(372条、351条)以外に明文がなく、保証人について定めた460条が類推適用できないか。

460条柱書の前提となる459条1項条は、「弁済をし、」「債務を消滅させる」という具合に、具体的に保証人が債務を消滅させる行為を観念している。そうすると事前に求償するための金額の範囲が具体的に決定される。一方で物上保証人は自己の財産を担保として提供するにすぎない物的担保提供者である。このような財産は競売にかけられて換価され初めて、必要な金額について債権者が弁済を受ける。不必要だった換価金は物上保証人が取り戻せるため、物上保証では事前に求償範囲を決定することが困難である。よって、物上保証人に460条柱書は類推適用されない。

3.後段について

 上述の通り抵当権者に関する372条は質権設定を他人の債務を担保するためにした者についての事後求償権を定めた351条を準用しており、BのAに対する事後求償権は認められる。この点については物上保証人が自己の財産を消滅させたため求償権を確保する必要性が446条1項の保証人と同様に認められる。更に、前段と異なり事後求償であることから換価金から不必要だった金額を除いた額が具体的に決定されることから、求償を認める許容性もある。

第3.設問2

1.前段について 

EのBに対する遺留分減殺請求権(1028条柱書、1031条)は認められるか。まず、EはAの子であるから、「兄弟姉妹以外の相続人」(887条1項)である。そして、本件は子が相続人である場合であるから1028条2号の場合にあたり、「被相続人」であるBの財産の2分の1について「額を受ける」(同柱書)ことになる。そして、Aの相続が開始したのは平成24年3月25日であり、AのBに対する贈与(549条)は平成24年1月18日であることから、「一年間にしたもの」(1030条)といえる。よって、1031条の請求が認められる。

2.後段について

 EのBに対する請求が認められる場合、上記のように2分の1について「額を受ける」ことになるため、2分の1について上記贈与を減殺でき、甲土地についても2分の1の所有権を有することになる(1031条)。そうすると、EとBは甲土地を共有(249条)することになる。ここで、Bが乙建物を甲土地上に有することから、BのEに対する所有権に基づく返還請求権としての建物収去土地明渡請求権が認められないかが問題となる。その請求原因は①E所有、②B占有である。本件では、Bは乙建物によってEが半分の持分を有する甲土地を占有している(②)。もっとも、Bも甲土地の「全部について」(249条)持分に応じた占有ができるから、Eの排他的な権利まではなく①を満たさない。よって、同請求は認められない。

以上。