娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

中大2019商法

第1.(1)について

1.①について

 本件株主総会の不存在確認の訴え(会社法830条1項)は認められるか。「決議が存在しない」の意義が問題となる。

(1)同項の趣旨は、決議内容の法令違反(同2項)よりも決議の瑕疵が著しい場合に、法的安定性を犠牲にしてでも決議の不存在を確認する訴訟を認める点にある。そうすると、「決議が存在しない」とは、決議が物理的に存在しない場合のほか、決議に著しい瑕疵がある場合をいう。

(2)本件では、本件両議案は決議要件を満たして可決されている。そうすると、決議自体に瑕疵はないため、決議に著しい瑕疵があるともいえないため、「決議が存在しない」といえない。よって、同訴えは認められない。

2.②について

 本件株主総会の無効確認の訴え(同2項)は認められるか。P社は株式会社であり、取締役選任議案と剰余金配当議案はそれぞれ329条1項と454条1項柱書に株主総会での決議事項とされているから、「決議の内容が法令に違反する」といえない。よって、同訴えは認められない。

3.③について

 本件株主総会の取消しの訴え(831条1項)は認められるか。確かに本件では「株主」(299条1項)Aに対して「招集…通知」を発しておらず、「招集の手続…が法令…に違反」(831条1項1号)するといえるため、本案勝訴要件は満たす。しかし、AがP社の株式を8%有する「株主」(831条1項柱書)でありP社を被告に提起するとしても、本件株主総会は平成30年6月25日に行われており、現在は同年10月3日であり、「三箇月」が経過している。よって、訴訟要件を満たさず、同訴えは却下される。

第2.(2)

1.丙社の乙社に対する丙社・甲社間の消費貸借契約(民法587条)に基づく貸金返還請求権は認められるか。本件譲渡は「事業…譲渡」(会社法467条1項1号)に当たるため、乙社は「事業を譲り受けた会社」(22条1項)といえる。もっとも、乙社が甲社の「商号を引き続き使用する」事情はなく、同条を直接適用できない。ここで、同項が類推適用されないか。

(1)同項の趣旨は、虚偽の外観作出につき本人に帰責性がある場合に第三者を保護する表見法理にある。そうすると、事業主体を表す名称の継続使用があれば同項を類推適用できる。

(2)本件では、乙社は後者から譲り受けたホテル部門を「Mホテル」の名称で営業している。「Mホテル」は甲社のホテル部門の事業を表す名称だから、事業主体を表す名称といえ、これが継続使用されているといえる。よって、同項が類推適用されうる。

2.本件貸付はMホテルの運営資金供給のためのものであるから、「事業によって生じた」(22条1項)といえる。よって、同条により丙社は乙社に対する総請求は認められる。

以上。