娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

中大2019民訴

第1.問1

1.600万円の支払いを命じることは、申立事項拘束主義(246条)に反しないか。「申し立てていない事項」といえないか。

(1)同条の趣旨は、訴訟物の特定について当事者が自由に決定できる処分権主義の側面を示す点にある。そうすると、別個の訴訟物について判決する場合は、「申し立てていない事項」を判決したことになる。

(2)本件訴訟物はXのYに対する消費貸借契約に基づく500万円の貸金返還請求権である。それに対して、600万円の貸金債権は本件訴訟物と社会的事実として同一性があるとはいえないため、別個の訴訟物であるといえる。本件ではこれが判決されようとしているため、「申し立てていない事項」が判決されようとしている。

2.よって、裁判所は問1の判決をすることができない。

第2.問2

1.消滅時効を認定してXの請求を棄却することは弁論主義第1テーゼに反し、違法とならないか。

(1)弁論主義とは、判決の確定に必要な資料の収集・提出を当事者の権能・責任とする建前をいう。その趣旨は私的自治の訴訟法的反映であり、機能は相手方の不意打ち防止にある。これらから、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎として採用してはならないとの弁論主義の第1テーゼが導かれる。もっとも、主要事実の存否を推認するのに役立つ間接事実や、証拠の信用性に影響を与える補助事実は証拠と同様の機能を有するため、これらに第1テーゼが適用されるとすると裁判官の自由心証(247条)が制約される。よって、第1テーゼは権利義務の発生・変更・消滅という法律効果の判断に直接必要な主要事実に適用される。

(2)消滅時効民法166条1項)の主張は本件訴訟物の請求原因と両立し、請求原因から発生する法律効果を障害する抗弁であるから、主要事実であるといえる。よって、第1テーゼの適用を受ける。

2.本件ではX・Yいずれからも消滅時効の主張はなく、第1テーゼにより上記棄却は違法である。

以上。