娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

中大2019民法

第1.設問1

1.BのFに対する賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての建物収去土地明渡請求権は認められるか。本件では、EはFに対して本件建物を譲渡しているため、従たる権利(民法87条2項類推適用)である甲土地の賃借権を取得している。それにもかかわらず、Aは「承諾」(612条1項)をしておらず、AはEに対して甲土地の賃貸借契約の解除権(同2項、540条1項)を有する。もっとも、Aは「死亡」(882条)しており、「相続」が開始し、「配偶者」(890条)Bは同解除権を相続している(896条本文)。

2.Bはこの解除権を行使して同請求をすることができるか。

 甲土地はA所有であったが、上記相続によって「配偶者」Bと「子」CDが甲土地をそれぞれ2分の1、4分の1、4分の1の割合で共有することになる(900条1号、4号本文、898条)。そうすると、Bの甲土地の持分は2分の1となる。土地の不法占有の解消は「保存行為」(252条但書)にあたるため、Bが同持分を有する以上、BはFに対して同解除権を行使することができる。

 以上から、同請求をすることができる。

第2.設問2

1.BはFからの請求に対する反論として、EとAの信頼関係が破壊されておらず、上記解除権は発生していないため、Bもそれを行使できないと反論が考えられる。

(1)賃貸借契約は信頼関係を基礎とする継続的法律関係であるから、信頼関係が破壊されたと認めるに足りない特段の事情があれば無断借地権譲渡に基づく解除権(612条2項)は制限される。

(2)確かに本件ではAとFには面識がなく、AはFの甲土地の利用状況を把握することができず、Aに不利益が生じるため、このような不利益を生じさせたEとAの信頼関係は破壊されたとも思える。しかし、甲土地の利用形態はEとFについて自動車修理業であり同じである。また、甲土地の賃借人がFに変更されているとしても賃料は継続的にAに対して支払われており、Aに経済的な不利益が生じたわけではない。そして、本件ではAはFの甲土地の利用を知っても法的措置を取らなかったのだから、AはFが甲土地を利用することを許容していたとまでいえる。よって、AE間の信頼関係は破壊されておらず、解除権は制限される。

2.Bが解除権を行使できない結果、上記のようにFは甲土地の賃借権を取得しているから、Fは甲土地を占有する権原を有する。それに対して甲土地は上記のように上記割合でBCDが相続しており、甲土地の賃料は月15万円だったため、Bは75000円、CDは32500円をFに対して毎月請求できる(427条、601条)。

第3.設問3

1.Gは抵当権者として甲土地の換価金から優先弁済を受けることができるか(369条1項)。本件では、Bは遺産分割(906条)によって甲土地を取得している。もっとも、Fは相続人Cの持分の上に抵当権を設定しており、「第三者」(177条)にあたるため、優先弁済を受けることができるといえないか。遺産分割後の第三者が「第三者」といえるかが問題となる。

(1)遺産分割は新たな物権変動と同視できる。また、相続放棄(939条)と異なり、家庭裁判所での調査ができない(938条参照)できないため、遺産分割後の第三者を保護する必要性は大きい。そこで、その者も「第三者」に当たると考える。

(2)本件でも、Gは「第三者」であるため、Bに抵当権を対抗でき、甲土地の換価金から優先弁済を受けることができる。

2.甲土地についてCが得る賃料から物上代位(372条、304条1項本文)を受けることもできる。

以上。