娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H27民法

第1.設問1

1.FのBに対する所有権に基づく返還請求権としての甲建物の明渡請求権は認められるか。①F所有、②B占有が請求原因となる。本件では、Bは甲建物で工芸品の製作をしながら、現在、甲建物を占有している(②)。そして、本件ではAB間で本件贈与契約(民法(以下略)549条)が締結されており、Bに甲建物が譲渡されている。一方で、Aが死亡し子CDEはAを相続し(882条、887条1項)、甲建物についても権利義務を3分の1ずつ承継し共有している(896条1項本文、898条、900条4号)。そうすると、甲建物の合計3分の2について持分を有するCDがFに対して甲建物を売っているため、甲建物の3分の2の持分はFにも譲渡されている。そして、この3分の2についてはCDからFへ移転登記がされており、BはFに同持分につき対抗できない(177条)。一方で、甲建物につき3分の1の持分を有するEからBは移転登記がされており、BはFに同持分を対抗できる。そうすると、BとFはそれぞれ3分の1、3分の2の割合で甲建物を共有していることになる。ここで、「過半数」(252条本文)を持つFが「管理」として甲建物の明渡を請求できないか。

(1)少数持分権者も249条に基づいて共有物の全部について占有する権原を有する。よって、自己の持分が「過半数」を超えることを理由として少数持分権者に対して当然に明渡請求をすることはできない。

(2)本件でもFが甲建物について3分の2という「過半数」を持っているとしても、当然に明け渡し請求は認められない。

2.以上から、FのBに対する請求は認められない。

第2.設問2

1.BのEに対する履行不能に基づく損害賠償請求権(415条後段)は認められるか。①「履行」不能、②「損害」(同前段)、③①②の因果関係、④「債務者の責めに帰すべき事由」が要件となる。

(1)確かにE自身はBに対して持分について登記を移転している。しかし、登記を移転させる義務は性質上不可分債務(430条)であるから、CDの持分についてもEは登記を移転する義務を負う。上記のようにCDの持分についてBは対抗できなくなっており、「履行」不能といえる。

(2)Bは甲建物の3分の2について移転登記が不能となったことによって、今後Fから持分が3分の1であるのに全部を占有していることから、不当利得返還請求権(703条)を行使される可能性があり、「損害」が発生している。

(3)①②には社会通念上の因果関係がある。

(4)「責めに帰すべき事由」とは、故意・過失又は信義則上これと同視すべき事由である。

 本件では、上記遅行不能が生じたのはCDがFに甲建物の登記を移転したからである。本件売買契約の際、CDはFに対してCDが甲建物を取得することをEが承諾した旨の書面を見せるという手段をとっている。そうすると、Eが一切本件売買契約を知り、食い止めることはできなかったといえる。そうすると、故意・過失又はこれと同視できる事情はなく、「責めに帰すべき事由」はないといえる。

2.以上から、上記請求は認められない。

以上。