中大2019憲法
第1.制度Aについて
(1)すべての者を機械的に均一的に扱うことはかえって不合理な結果をもたらすことから、「平等」(同項)とは、等しい者は等しく、等しくない者は程度に応じて等しくなく扱う相対的平等をいう。そうすると、世代別選挙区制度を採用する場合は、各選挙区に世代の人口の多さに比例して議席を確保するべきである。それにもかかわらず、本件では各選挙区に同数の議席が配分されており、世代ごとに区別が認められる。
(2)世代別選挙区制度での選挙権は、世代ごとの民意を反映させるためのものであるから、重要な権利である。また、年代は自分がいつ生まれたかによって決まるものであるから、自助努力によって脱却できるものではない。
(3)以上から、目的が重要で、手段に合理性・必要性があれば合憲であると考える。
(4)制度Aの目的は、「未来の声」の主体である若者・生まれていない者の意見を国政に反映させることである。確かに選挙権を有しない者の意見を国政に反映させることは選挙権を成年者とした憲法(15条3項参照)の趣旨に反するため不当であるとも思える。しかし、現在日本は少子高齢社会であり、高齢者の利害が国政に届く結果、これからの日本の担い手である若者世代に負担を背負わせるような政治がまかり通ることになってしまう。これを防ぐために「未来の声」を国政に反映させる目的は重要である。
制度Aの手段は世代別選挙区制度を取り入れた上で、各選挙区に同数議席を分配するというものである。確かに少子高齢社会でこれをすれば高齢者になればなるほど一票の価値が低くなっていき、若者世代の意見が通りやすくなるため、目的は促進されるため、合理性がある。しかし、本件では世代ごとに同議席が分配されている。同議席にしなくても、高齢者がどのくらい多いかを検討し、「未来の声」が届く程度の議席を高齢者層に分配しても本件目的は依然達成可能である。それにもかかわらず本件ではそれをしておらず同議席としており、手段が過剰である。よって、手段に必要性はない。
2.以上から、制度Aは違憲である。
3.違憲状態を解消ないし緩和するためには、上記のように「未来の声」が届く議席数の比率を維持しつつ高齢者層へより多くの議席を分配することがあげられる。
第2.制度Bについて
1.制度Bも14条1項に反し、違憲とならないか。
(1)上記のように「平等」は相対的平等を意味する。よって、子供がいる、いないということによって投票権の数は変動してはならない。それにもかかわらず、制度Bでは選挙権を有しない子供の選挙権が保護者に与えられており、その分保護者が多く投票できることになっており、区別が認められる。
(2)子供を持たないことは個人の意思決定にかかわるから、子供を持たなくても子供を持っている親と同等の価値の投票をできる地位は重要である。また、子供を持つ、持たないという選択は個々の信条・環境によって決まるから、個々の努力によってされるものではない。
(3)そこで、目的が重要で、手段に合理性・必要性がなければ違憲となる。
(4)上記のように目的は重要である。
確かに親に追加的に投票権を与えれば、親は愛する子供のために選挙権を適切に行使し、「未来の声」は色濃く国政に反映されることになるとも思える。しかし、制度Bでは子供が5人いる家庭の親は両親と合わせて7人分の選挙権を行使できることになる。5人も子供がいれば意見も違うはずであり、それを親が統一的に行使するとなるとむしろ国政がゆがめられてしまう。よって、手段が目的を促進するとはいえず、合理性があるとは言えない。
2.以上から、制度Bも違憲である。
3.改善策としては、子供が何人いても親が行使できるのは1票だけであるという制度にすることが考えられる。
以上。