娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H28憲法

1.本件条例はXのようなNPO法人の消極的表現の自由憲法(以下略)21条1項)を侵害し、違憲である。

(1)同項は、表現の自由を保障している。表現とは内心の表出行為であるから、ある見解を表明する自由が同項によって保障される。そうすると、その見解と異なる見解を表明しない自由も同項によって保障されていると考えられる。よって、XのようなNPO法人法律婚という形態に賛成しない自由は同項によって保障されている。それにもかかわらず、本件条例は、本件誓約書の提出を義務づけており、NPO法人がこの義務に違反すれば助成を受けられず事実上法律婚に賛成せざるを得なくなっており、同自由の制約が認められる。

(2)法律婚に賛成しない自由は、事実婚に賛成するという側面を有する。事実婚は男女の生活を営む一形態として尊重されるべきであるという見解も一考に値する。よって、事実婚を推進するNPO法人にとって法律婚に賛成しないことは重要な自由であるといえる。また、結婚支援事業を行うXのようなNPO法人は助成がなければ資金不足になり、その活動の継続が困難となる。よって、制約は重大である。したがって、目的が必要不可欠で、手段が必要最小限度と言えなければ違憲となる。

(3)本件条例の目的は、①未婚化・晩婚化の克服、②安心して子供を持つことのできる社会の実現である。少子高齢化克服が望まれる日本では①②必要不可欠な目的である。そして、本件誓約をさせれば法律婚を推進するNPO法人ばかりに助成がされ、①②に役立つと思える。しかし、「婚」という字には男女の結合の一形態である事実婚も入るため、事実婚推進派のNPO法人への助成を断つ手段は①との関係で必要でない。また、事実婚カップルも子供を授かるのだから、その手段は②との関係でも必要ない。よって、本件条例は違憲である。

2.反論

(1)そもそもNPO法人は資金を自分で集めるのが原則であり、助成を打ち切っても権利の制約がない。

(2)また、制約があるとしても制約は強いといえないうえ、A市の財源には制限があり、どのNPO法人に資金を分配するかにはA市に裁量がある。

(3)よって、目的が正当で、手段を促進すればよく、本件条例は合憲である。

3.私見

(1)確かにNPO法人はA市から助成を受ける権利を有しないとも思える。しかし、本件では結婚支援事業を行うNPO法人に10年も前から助成が行われていた。10年間の助成があればXのように活動資金の大部分を助成によって賄うNPO法人が多数であったといえる。そうすると、もはや助成を受けられるのが原則で、権利の制約が存在するといえる。よって、被告の反論は失当である。

(2)確かに、本件制約書は助成を受けるために形式的に意見表明を強いるだけとも思える。しかし、そのような内容が条例にあれば、事実婚をしたい人がXのようなNPO法人を嫌ってしまうことになる。そうすると、XのようなNPO法人が本来の活動をすることができなくなり、やはり制約は強いといえる。また、確かに財政上の理由から、A市に資金分配の裁量があるとも思える。しかし、事実婚は多くてもカップルを誕生させる成績のいいNPO法人を、成績が悪いが法律婚を推進するNPO法人に優先させないのは、未婚化につながることになってしまう。未婚化につなげることにA市に裁量があるとはいえない。よって、被告の反論は失当である。以上から、原告の基準によるべきである。

(3)本件目的である①②の必要不可欠性に争いはない。本件手段は、成婚数に関する意見表明を助成の最初に強制させるものである。確かに意見表明をさせれば法律婚を推進するNPO法人が増え、法律婚が推進される結果子供を持つカップルが増え、①②を促進する。しかし、最初にそのような意見表明をさせなくても、カップルを誕生させられない成績の悪いNPO法人に対して助成を後から打ち切るという方法が考えられる。このような方法でも、男女の出会いは阻害されず、むしろ能力のないNPO法人が生き残れず、未婚化・晩婚化、それにともなう出産は増加するため有効な手段といえる。よって、より制限的でない代替手段が存在し、本件誓約の必要性はないといえる。よって、必要最小限度と言えない。

(4)以上から、本件条例は違憲である。

以上。