娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H27行政法

第1.設問1

1.本件指定は「行政庁の処分」(行政事件訴訟法(以下略)3条2項)に当たり、処分性が認められないか。

(1)「行政庁の処分」とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為の内、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。よって、①公権力性、②国民の権利義務への直接的な規律を備える者をいう。また、実効的権利救済の見地も踏まえて判断される。

(2)本件指定は、河川法(以下、法)6条1項3号に基づいて、河川管理者であるA県知事によって行われた。よって、優越的地位から一方的にされるものといえ、公権力性がある(①)。

 本件指定は2500分の1の縮尺(法施行令5条2項柱書)という広い地形を表示できる縮尺を用いていることからすれば、本件指定は不特定多数者に対する指定であるといえ、個別具体性を欠くとも思える。しかし、その縮尺は公示され(法6条4項)、本件指定の区域内であるか否かを人々は十分に知ることができる。そうすると、本件指定は個別具体性を有するといえる。

 また、本件指定がされれば河川区域内で工作物の新築等をする場合には、「河川管理者」であるB県知事の許可が必要となる(法26条1項)。また、この規定に反した場合、懲役刑という重罰に処せられる危険もある(法102条2号、柱書)。そうすると、本件指定には法効果性を認めるべきである。

 そうすると、国民の権利義務への直接的な規律があるといえる(②)。

 そして、確かに法75条1項柱書の監督処分に処分性を認めれば足りるとも思える。しかし、本件指定を取り消さなければCは刑事罰を免れることはできない(法102条2号、26条参照)ため、本件指定に処分性を認めることがCの権利救済に資する。

2.以上から、本件指定は「行政庁の処分」といえる。

第2.設問2

1.本件命令は法75条1項柱書に基づく。同柱書は「できる」と定めており、本件命令には形式的に裁量が認められる。また、同柱書の趣旨は、法に反して河川に損害を与えるような行為に対する監督処分権を「河川管理者」に与える点にある。どのような行為が河川に損害を与えるかは、河川の事情に詳しい「河川管理者」でなければ知りえない。そうすると、本件命令は専門技術的事項に関するとして、実質的にも裁量が認められる。よって、本件処分は「裁量処分」(30条)であり、裁量の逸脱又は濫用がある場合に違法となる。

2.本件命令はCの信頼を裏切る者であり、信義則に反するといえないか。

(1)信義則は全ての法領域で妥当する概念であるため、行政庁が裁量を逸脱又は濫用した理由にもなりうる。もっとも、信義則は一般条項であるため、適用が限定されるべきである。そうすると、①公的見解が表示され、②それを信頼したことに帰責性がない場合にのみ適用されると考える。

(2)本件では、確かにA県の職員であるDという公的立場のものから、「本件コテージは河川区域外にあると判断している。」という本件コテージによって法75条1項柱書の監督処分を受けないことを示す表示を得ている。しかし、その表示では、「正確なことはいえない」という留保が付されていたため、公的見解の表示であるとまでは言えない。

 また、確かにCは本件コテージが建築された2000年から2014年という長きにわたって河川法上の問題を指摘されなかったため、表示への信頼に帰責性がないとも思える。しかし、本件コテージの位置が境界から数メートルしか離れていなかったにもかかわらず、漫然と河川区域外にあると判断した点にCには規制事由が認められる。

3.したがって、信義則の適用はなく、違法事由は認められない。

以上