娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

予備試験H27民事実務基礎科目

第1.設問1

1.(1)について

(1)被告は、原告に対し、本件土地について、平成26年9月1日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。被告は、原告に対し、本件土地を引き渡せ。

(2)本件ではXはY「代理人」(民法99条1)Aとの売買契約(民法555条)によってYに対する請求をすることを考えている。99条1項の要件は、a代理人と相手方の法律行為、b顕名、caに先立つ本人の代理権授与である。

 本件では、本件売買契約の存在がaにあたり(①について)、Yのためにすることを示すことがbに当たる(②について)。そして、Yの①に先立つ代理権授与がcに当たる(③について)。

第2.設問2

1.(1)について

(1)抗弁とは、請求原因と両立し、請求原因から発生する法律効果を障害、消滅、阻止する事実の主張である。

(2)Ⅰの事実では、YはAに対して250万円で売却することを承諾したことはないと主張している。これは、上述のXの請求原因①③と両立しない事実であるから、相手方の主張事実と両立しない事実を積極的に述べて、相手方の主張を否定する陳述である積極否認である。よって、抗弁として扱うべきでない。

2.(2)について

(1)請求原因において双務契約であることを基礎づける事実が主張されている場合、当然に民法533条の存在効果が発生することになる。そのような存在効果は原告が債務を履行しないことの違法性阻却事由となるため、被告は請求原因にそのような主張があるときは抗弁で存在効果を障害、消滅させなければならない。

(2)本件では、Xは売買契約という双務契約を請求原因で主張している。よって、Yは本件土地を引き渡して同時履行の抗弁権を消滅しておかなければならず、それを主張していないⅡを履行遅滞に基づく解除(民法541条)の抗弁とすることはできない。よって抗弁と扱うべきでない。

第3.設問3

1.(1)について

 本件では弁護士Qは本件売買契約書の成立を認める旨を陳述している。これは補助事実の「自白」(民事訴訟法179条)に当たらないか。

(1)「自白」とは、①口頭弁論・弁論準備手続における②相手方の主張と一致する③自己の不利益な④事実の陳述である。

(2)本件では、第1回口頭弁論でQは同成立をみとめ(①)、これはXの主張と一致する(②)。また、Xに不利な事実で(③)、補助事実の自白である(④)。よって、179条によって何等の証拠調べなく裁判所はA作成を認定できる。

2.(2)について

(1)Xに有利な事実について

 本件では、Yは250万円でないと資金繰りの関係でXが代金を支払えないことを認識している。そのような認識があり土地を売却することを決意したのであれば、Aに与える代理権の内容は250万円で売却することであったと考えられる。よって、【事実】が相当程度推認される。

 また、本件では金額欄が空欄の状態でAが本件売買契約書を持参してきた。Aが280万円を金額の下限として設定したとすれば、下限である280万円の金額を記入するはずである。よって、契約書の金額欄が空欄であればXの希望通りの250万円の代理権授与があったことが相当程度推認される。

 そして、実印はY宅に厳重に保管されているのであれば、Aが勝手に実印を持ち出すことはほぼ不可能であるため、Yが押印したと考えられる。よって、250万円の代理権授与があったと強く推認される。

(2)Yに有利な事実への反論

 本件では、確かにXは委任状を見せられたことはなかったため、代理権について確認をしていない。しかし、XとAは前から知り合いだったのであり、確認をしなくても不自然ではない。そして、AはかつてよりYの代理人だったのだから、何度も委任状を作成しないこともありうる。よって、委任状の確認の欠如は【事実】と矛盾しない。

 確かに280万円についての代理権があったのみとも考えられる。しかし、250万円との差額は30万円と少額である。よって、この点にこだわるYの主張は信用性が低い。よって、【事実】の金額が正しい。

 また、確かにAが過去の取引の際本件売買契約書に押印したとも考えられる。しかし、委任契約(民法643条)では、受任者は原則として報酬を請求できず(民法648条1項)、本件で報酬に関する特約はないため、Yが本件売買契契約書について勝手に押印して、売買契約を成立させる動機が本件では考えられない。よって、【事実】が一応推認される。

第4.設問4について

 本件では、Pは通知書に「不遜極まりない」「だまし取った」等の雑言を浴びせる内容を記載している。この点はYの名誉を害するものであり、弁護士職務基本基底(以下、規定)6条に反する。また、それをZ社に送付することで、Yの訴訟継続という「秘密」(規定23条)が関係者に晒されることになり、同条の「正当な理由」がない本件では同条にも違反する。

以上