娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問4

第1.(1)について

1.Xは「現行犯人」(213条)といえ、本件現行犯逮捕は適法ではないか。

2.Xは本件強盗事件の「現に罪を行い終わつた者」(212条1項)といえないか。

(1)現行犯逮捕の趣旨は、逮捕の必要性が高い一方、嫌疑が明白であるため誤認逮捕の恐れが少ない点にある。そうすると、「現に罪を行い終わつた者」とは、①犯罪と②犯人の明白性をいい、時間的・場所的近接性は②の重要な考慮要素となる。

(2)本件では、強盗事件の通報があり犯罪は明白である(①)。また、確かにXは50歳くらいの男、170cm、小太り、ZのエコバックというVの証言と一致する特徴を有しており、犯人性が明白であるとも思える。しかし、KがXを発見したのは犯行から2時間後という長時間後かつ8キロメートル先という長距離を経た場所であったため、時間的場所的接着性はない。また、被害額でありXの持っていた金額である5万円は大金ではなく人が所持する金額としては自然な金額であるため、犯人性が明白とは言えない。そうすると、犯人の明白性を認めるに足りない。よって、「現に罪を行い終わった者」といえない。

3.Xは212条各号に該当するものではないため、準現行犯逮捕もできない。

4.以上から、本件現行犯逮捕は違法である。

5.ここで、違法な逮捕に続く勾留の適法性が問題となる。

(1)司法の無瑕性、将来の違法捜査抑止の見地から、重大な違法逮捕に続く勾留は違法である。

(2)本件現行犯逮捕は上記のように違法である。また、終始令状請求せずにXを逮捕しており、通常逮捕(199条1項)、緊急逮捕(210条1項)のいずれともみることはできない。よって、重大な違法があるいえるため、令状裁判官は勾留請求を却下すべきである。

第2.(2)について

1.上記のように先行逮捕は違法であるため、本件では違法逮捕後の再逮捕の適法性が問題となる。

(1)確かに違法逮捕後の逮捕を認めれば司法の無瑕性は傷つけられ、将来の違法捜査の反復が招かれる場合がある。しかし、勾留請求の段階で逮捕が違法と宣言されれば司法の無瑕性、将来の違法捜査の抑止に対する要請は一応満たされる。そこで、勾留の違法が宣言されていれば、逮捕の違法性が著しい場合にのみ再逮捕を許さないべきである。

(2)確かに本件では現行犯逮捕の要件を満たしていない逮捕が存在する。しかし、上記のような勾留請求が却下されているため、違法捜査の宣言はされている。他にXに著しく不利益となった事情もない。よって、著しい違法とまではいえない。

2.以上から、Xの再逮捕は許される。

以上