娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問5

第1.B事実について

1.本件ではXはA事実で逮捕・勾留され、その保釈中に重ねてB事実で逮捕・勾留されている。ここで、B事実での逮捕・勾留は重複逮捕・重複勾留禁止の原則に抵触しないかが問題となる。

(1)203条ないし206条又は208条が厳格な時間制限を課していることから、同一被疑事実につき、同時に重ねて逮捕・勾留することはできないとの原則が導かれる。同一被疑事実とは捜査の蒸し返しが禁じられるべき実体法の一罪のことであり、このように考えれば基準の明確性にも繋がる。もっとも、上記原則は、捜査機関の同時処理が前提となるため、同時処理が不可能であったのであれば例外的に重ねて逮捕・勾留できる。

(2)本件では、A事実とB事実は包括一罪であり、実体法上の一罪である。よって、原則としてB事実の逮捕・勾留は許されない。また、B事実はA事実の前のものであるため、観念的には捜査機関は同時処理が可能だったといえる。よって、原則通りB事実での逮捕・勾留は許されないとも思える。

2.もっとも、捜査は流動的なものであるため、①重複勾留の必要性が高く、②身柄拘束の不当な蒸し返しとならない場合にも重複逮捕・勾留は許される。

 本件でも①②があれば許される。

第2.C事実について

1.C事実での逮捕・勾留は上記原則に抵触しないか。

(1)上記規範で判断する。

(2)C事実はA事実の後のものであるため、同時処理の可能性が観念的にすらなかったといえる。よって、上記原則は適用されない。

2.以上から、XをC事実で逮捕・勾留することはできる。

以上