娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問24

1.本件領収書について

 本件領収書は「公判期日における供述に代」わる「書面」(刑事訴訟法(以下略)320条1項、以下、伝聞証拠)といえ、証拠能力が否定されないか。

(1)同項の趣旨は、知覚・記憶・表現・叙述の各課程を経る供述証拠ではその間に誤りが混入しやすいのに、伝聞証拠では反対尋問(憲法37条2項前段)等による真実性の吟味をしえず、誤判が生じてしまうためそれを防止する点にある。そうすると、伝聞証拠とは、①公判廷外の供述を内容とする証拠で、②供述内容の真実性を証明するために用いられるものをいう。②は要証事実との関係で決まる。

(2)本件領収書はSの公判廷外の供述を内容とする(①)。また、本件争点はXの金員供与の有無であり、立証趣旨は領収書の存在と内容である。確かに本件領収書の存在と内容を証明したところで、Sが1000万円を受け取ったことが証明されない限り、争点との関係で本件領収書は無意味な証拠であるとも思える。しかし、領収書は通常、金員の受け取りを証明する性質を有するから、SがYに対して本件領収書を交付した事実が認められれば、本件領収書の存在と内容も本件争点と関連性を有する。よって、その場合は要証事実も領収書の存在と内容となり、供述内容の真実性を証明するために用いられるとはいえない。よって、そのときは、本件領収書は非伝聞証拠であり証拠能力が認められるため、裁判所は本件領収書を証拠として採用することができる。

2.本件メモについて

 本件メモは伝聞証拠といえ、証拠能力が否定されないか。

(1)上記規範で判断する。

(2)本件メモはYの筆跡によるからYの公判廷外の供述を内容とする(①)。また、確かにメモの存在と内容を証明したところで、本件争点に対して関連性を有しないとも思える。しかし、本件メモはXが使用している机から発見されているため、Xの支配領域から発見されたといえる。そうすると、記載内容と現実が一致すれば、本件メモの存在と内容からXが1000万円の金員供与に関わったと推認できる。よって、その場合は本件メモは供述内容の真実審の証明に用いられるとはいえず、非伝聞証拠である。よって、そのときは、裁判所は本件メモを証拠として採用できる。

以上