娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問15

1.本件では、住居侵入罪・窃盗罪の共同正犯(刑法60条、130条前段、235条)についての訴因が掲げられた状態で、その幇助(同62条1項)の事実を認定できるか。訴因変更(刑事訴訟法(以下略)312条1項)がいつ必要になるかが問題となる。

(1)訴因の機能は、裁判所との関係で審判対象を画定し、その範囲でのみ被告人に防御範囲を明示する点にある。そうすると、①審判対象画定の見地から必要とされる事実に変更があった場合については、確実に訴因変更が必要である。また、そうでない事実であっても、争点明確化の見地から、②一般的に被告人の防御にとって重要な事実に変更があった場合については訴因変更が原則として必要である。もっとも、a被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、b認定事実が訴因記載事実と比べて被告人にとってより不利益とならない場合には、例外的に訴因変更は不要である。

(2)本件では、共同正犯の訴因から幇助の事実が認定されており、訴因記載事実の構成要件とは異なる事実が認定されており、審判対象画定の見地から必要とされている事実に変更がある(①)。よって、訴因変更が必要であるとも思える。

2.もっとも、共同正犯の訴因は幇助の訴因を包摂しており、幇助の事実の事実を認定することは許されないか。

(1)訴因記載事実が認定事実を包摂している場合、検察官は黙示的・予備的に認定事実を主張していたといえるため、縮小認定において訴因変更は不要である。

(2)確かに共同正犯は幇助犯の加重類型である。しかし、幇助にはさまざまな態様があり、共同正犯との質的な違いが存在する。そうすると、共同正犯と幇助犯は単純な包摂・非包摂関係にはなく、縮小認定とは言えない。よって、共同正犯の訴因から幇助を認定する際には訴因変更は必要である。

3.したがって、本件では訴因変更が必要である。

以上