娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問16

1.本件では、過失運転致死罪の訴因を犯人隠避罪の訴因へ変更する許可が請求されており、両者の訴因に「公訴事実の同一性」(刑事訴訟法312条1項)が認められるかが問題となる。

(1)同項の趣旨は、1個の刑罰権に服する事項につき、2個以上の訴因が構成され、2個以上の有罪判決が生じることを回避するために、二重起訴禁止(338条3号)、一事不再理効(337条1号)の各制度と共に、1個の刑罰権に服する事項を1回の手続で処理させる点にある。そうすると、「公訴事実の同一性」とは、別訴でともに処罰されるとしたならば、二重処罰となるような非両立関係をいう。

(2)確かに両犯罪事実の訴因に記載される時刻・場所は近接する。しかし、過失運転致死罪の行為は漫然と運転したことであるのに対し、犯人隠避罪の行為はYの隠避行為であるため、行為を異にする。また、前者はV個人を死亡させたことに対する罪であるのに対し、後者は刑事司法作用を害する罪であるため、被侵害法益を異にする。したがって、本件では、二重処罰となるような非両立関係はなく、「公訴事実の同一性」があるとはいえない。

2.よって、訴因変更は許容されない。

以上