娯楽の基本書

東京大学大学院法学政治学研究科在学中。司法試験、予備試験、ロー入試攻略サイト(途上)。

事例演習刑事訴訟法 設問20

1.本件では、KはXに対して「確実に不起訴にしてやるから」と申し向けた結果、XはCからの10万円の受取りを自白している。ここで、Xの自白は「任意にされたものでない疑のある」(刑事訴訟法(以下略)319条1項)ものといえ、証拠能力が否定されないか。

(1)自白法則(同項、憲法38条2項)の趣旨は、不任意自白は虚偽の恐れがあり、これを用いれば誤判が生じる恐れがあるため、あらかじめ不任意自白を排除しておく点にある。そうすると、「任意にされたものでない疑のある自白」といえるかは、類型的に虚偽の自白を誘発する状況があるかで判断される。

(2)本件では、確かに本件申し向けの主体はKという警察官であり、不起訴の働き掛けをするような権限を持たないものである。しかし、一般人であるXからすれば、捜査機関である警察官にもそのような権限があると考えてもおかしくはない。また、提示された利益は不起訴という有罪を完全に免れることのできる重大なものだった。そして、Kは当然上記権限を持たないから、本件でXに自白をさせようとして本件申し向けにより嘘をついたといえる。更に、Xは15日も勾留されており、精神的にも身体的にも披露は限界を迎えていたため、早く供述をして楽になりたいと考えたといえる。以上を総合すれば、類型的に虚偽の自白を誘発する状況があったといえ、本件自白は「任意にされたものでない疑のある自白」といえ、証拠能力が否定される。

2.したがって、本件自白は証拠能力を欠き、裁判所はXの自白を証拠とすることができない。

以上